“互いに頂点を目指したからこそ、当人たちにしか分からない悔しさがある” 夏の富士で坪井夫妻がみせた涙の理由
2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦。今回は初めて女性ドライバーだけのシリーズである『KYOJO CUP』と併催されるということで大きな注目を集めたが、そこで日本のモータースポーツ史に残る快挙が生まれた。
今回、KYOJO CUPは土曜日と日曜日にそれぞれ決勝が行われたが、いずれも斎藤愛未(Team M岡部自動車 D.D.R VITA)が優勝。そして日曜日のスーパーフォーミュラ決勝では、斎藤と2022年末に結婚を発表した坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が、4番手スタートから力強い走りで逆転し、自身4年ぶりとなる国内トップフォーミュラ優勝を飾った。
パルクフェルメでは、坪井のもとに妻の斎藤が駆け寄り、喜びを分かち合った。その感動シーンに、グランドスタンドで観戦していた観客からはあたたかい拍手が贈られた。
その週末に同じサーキットで開催されたレースに、夫婦が別々のカテゴリーで参戦して同時優勝を飾る。モータースポーツ界の歴史に刻まれる快挙となったことは間違いないだろう。
各メディアでも“夫婦で優勝”と取り上げられ、モータースポーツ界のみならず、多くの人がそのニュースに触れた1週間だったように感じる。
ただ、筆者個人の感想としては…、ここに至るまでの間、それぞれがレースで悔しい思いをし、その度にお互い支え合って頂点を目指す姿を見てき。だからこそ、2人が喜ぶ姿を見て、過去取材してきた様々なシーンが思い出された。
【妻の初優勝に夫が涙。その裏にあった“悔しい2位”】
これまでインタープロトシリーズに夫、KYOJO CUPに妻がエントリーするという例は何度もあった。しかし、今回は国内最高峰と言われているスーパーフォーミュラのレースウィークということで、金曜日から各メディアが2人のもとへ取材に訪れ、その注目度の高さがうかがえた。
まず見せ場を作ったのが妻の斎藤だ。
7月20日に行われたKYOJO CUP第2戦の決勝で、3番手スタートからトップ争いを展開。12周で争われる決勝レースのうち、後半に入ってからの追い上げが素晴らしった斎藤は、しっかりとチャンスを見極めて8周目に入ったところで先頭に躍り出た。そこからファステストラップを連発して、2番手を走る下野璃央(Dr.DRY VITA)に対して1.2秒差をつけた。