元巨人・クロマティの下半身不随初告白動画が話題に…誰でも発症する「歩けなくなる病気」の怖さ
プロ野球巨人の“最強の助っ人”といわれるウォーレン・クロマティ(71)が自らのYouTubeチャンネルと「トクサンTV」で車いす生活の真相を語り、話題を呼んでいる。神経の病気であるギラン・バレー症候群と、脊柱管狭窄症を併発したそうで、本人は「ネバー・ギブ・アップ」を強調するが、医師は人ごとではないという。 クロマティ語る野球人生最初で最後の「甲子園3連発ショー」 ◇ ◇ ◇ 2つのYouTubeチャンネルによると、クロマティは2021年12月に新型コロナに感染すると、新年になって脚に力が入らなくなって病院へ。動画では、急に立てなくなった衝撃の瞬間が映し出され、歩けなくなったという。 その後、原因は神経の病気であるギラン・バレー症候群と脊柱管狭窄症を同時に患ったことであると語っている。映像では特殊な器具をつけて懸命にリハビリに励む姿も映し出されているが、下半身不随の影響か、脚の筋肉はやせ細り、前向きな言葉とは裏腹にかなりつらそうだ。 医師で医療ジャーナリストの富家孝氏(77)も、脊柱管狭窄症で苦しみつつも手術は受けずに生活していて、「クロマティさんのつらさはよく分かります」としてこう言う。 「ネット報道では、下半身不随の原因を脊柱管狭窄症と関係づける内容が見られますが、主因はギラン・バレー症候群だと思います。この病気は、何らかの感染症から1カ月後くらいまでの間に体を守る免疫システムに異常が生じ、末梢神経が障害されて、手足に力が入らなくなる、感覚が分からなくなる、しびれるといった症状を起こします。一方、脊柱管狭窄症は腰部の神経が圧迫されて脚の痛みやしびれなどを生じる病気ですが、まったく歩けなくなるほどではなく、歩いているうちに痛みやしびれが強まり、休まないといけなくなることがほとんど。私の場合、歩けるのは5分30秒から6分ほどです。ですから、クロマティさんの車いす生活の原因は、脊柱管狭窄症があるにしても、どちらかというとギラン・バレー症候群の方が強いと思います」 ギラン・バレー症候群については、今年世界一に輝いたドジャースの内野手フリーマン(35)の三男マキシムス君(3)も7月末に発症。フリーマンは一時、チームを離れて息子に寄り添ったが、その甲斐あって、息子は回復している。その息子も発症前にウイルスに感染。全身マヒをキッカケにこの病気が判明したという。 ■感染から1カ月後までの急な脱力は神経内科へ では、厄介な2つの病気は、どんなことに気をつければよいのか。富家氏に聞いた。 まずはギラン・バレー症候群についてだ。 「ギラン・バレー症候群で気をつけたいのは、何といっても感染症後の対応です。風邪や下痢などありふれた症状がよくなったとしても、そこから数日後から数週間後に急に手足に力が入らなくなったら、すぐに医療機関を受診することです。クロマティさんのように下半身のマヒや脱力から少しずつ上半身に広がるのが一般的で、ほかには顔の筋肉に力が入らなくなる、目を動かせず物が二重に見える、食事がうまくのみ込めない、ろれつが回らないといった症状もあります。いずれにしても感染症からしばらくして急に異変を感じたら、軽く考えるのは禁物なのです」 感染症の種類は問わない。クロマティは新型コロナだったが、軽い風邪でも起こりうる。フリーマンの息子は3歳で発症したように子供から高齢者までだれでも発症。日本の発症者数は、10万人あたり年間1~2人で、平均年齢は39歳。まれな発症者数ではあるが、感染症のリスクはだれにもあるだけに人ごとではないのだ。 病状が上半身に及んで呼吸に関係する筋肉がマヒすると、人工呼吸器が必要になり、死亡する恐れもあるが、副腎皮質ステロイドと併用しながら免疫反応を調整する免疫グロブリン大量静注療法を5日連続で行うと、劇的によくなることも珍しくないそうだ。 「この病気を治療するのは神経内科ですから、感染症後の急な違和感があれば神経内科を受診してください」 数カ月かけて少しずつ回復しながらも、2割は1年後も何らかの障害が残るというから、異変を見逃さずに早期に治療を受けることが重要だという。