運動後の素早い栄養補給がリカバリー効果を高める(専門家が監修)
連載「コンディショニングのひみつ」。長期的なコンディショニング戦略に不可欠な「食と栄養」を、その基礎知識とともに複数回にわたって解説していく。今回は「リカバリー食」について。[監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)]
運動後の素早い栄養補給がリカバリー効果を高める
運動後のリカバリーが大切なのは、素早い疲労回復が今後のコンディションやパフォーマンス向上に直結するため。なかでもカラダに大きな刺激が加わる運動直後は、その手段としてすみやかな栄養補給が重要となる。今回はそんな“リカバリー食”について、特に意識して摂取すべき栄養素を中心に解説していこう。
糖質(炭水化物)
筋肉の基本的なエネルギーとなるのが糖質だ。さらに普段の食事で余った糖質から変換され、筋肉に蓄えられるのが「グリコーゲン」。これが長時間の運動で減少すると、カラダはエネルギー源として筋肉自体を分解してしまう。すると疲労が抜けにくく、また回復を遅らせる原因にもなるため、運動後は30分以内に糖質を摂取してグリコーゲンを補充し、筋肉の分解を抑えることが重要だ。糖質はご飯やパンなどの主成分だが、果物に多い「果糖」は吸収率が高く分解されやすいので特におすすめ。
クエン酸
糖質やタンパク質、脂質などの栄養素の一部は体内でクエン酸に変換され、分解を繰り返し(このプロセスを「クエン酸サイクル」と呼ぶ)、細胞のエネルギー源「ATP(アデノシン3リン酸)」を生み出す。 クエン酸はレモンやオレンジなどの柑橘類、酢、梅干しなどに含まれる酸味成分でもあり、運動後に摂取することでエネルギー産生の効率を高め、疲労回復を促進。またクエン酸サイクルのスムーズな働きは、体内でマグネシウムや鉄、カルシウムといったミネラルの吸収もサポートしてくれる。さらに短期的なグリコーゲン補充戦略においては、クエン酸の同時摂取で糖質の分解を促す酵素の働きを抑制し、体内に貯蔵されなくなるのを防ぐというメリットも。
タンパク質
運動後は使った筋肉のタンパク質が分解され、細胞が破損された状態。そこで十分なタンパク質の補給が必要とされるが、その際のポイントが“糖質と合わせて摂取する”こと。血糖を下げるホルモン・インスリンが同時に分泌されるとタンパク質が筋肉へとスムーズに吸収され、筋肉の合成を促すことができるのだ。