専用設計のV型パワーユニットを得た、孤高のドラッガーエリミネーター250V
独自の「ドラッガー」路線を歩んだエリミネーターシリーズ
カワサキのエリミネーターシリーズは1985年にGPZ900Rのエンジンをシャフトドライブ化し、ローアンドロングなドラッグレーサー風の車載に搭載した900と国内向けに排気量を下げた750から始まる。1986年にはGPZ400R系のエンジンを同じくシャフトドライブ化して搭載した400が発売され、ドラッグレーサーリプリカの「ドラッガー」という独自のジャンルを築き上げた。1988年にはGPZ250系の並列2気筒エンジンを搭載した250がラインナップに加わり、250はチェーンドライブを採用し、40PSの最高出力を持つエンジンを搭載することで「ドラッガー」の名に恥じない仕上がりを見せた。 エリミネーター250は各部をブラックアウトしてビキニカウルを備えたSEと、スポークホイールが与えられたLXというラインナップを加え、一定のファンを獲得することに成功していた。エリミネーター250はVツイン勢の中で善戦していたものの、登場から10年が経ち古さを感じてしまうのは否めなかった。そして1998年、カワサキは満を持してフルモデルチェンジしたエリミネーター250を市場に投入した。
V型エンジン搭載は異端か、革新か、それとも流行か
「エリミネーター250V」と名付けられたこの新型は、ロングホイールベースを持つ車体に、「V」の由来となる専用設計された水冷のV型DOHC4バルブエンジンを搭載。スタイルとしてはドラッグイメージを引き継ぎつつも、かなりフォークを寝かせたロング&ローなデザインに仕立てられていた。旧エリミネーター250が全長2140mm、ホイールベース1490mmだったことを考えると、全長2355mm、ホイールベース1620mmとなったエリミネーター250Vはワンランク上とも言える存在感を持っていた。 エリミネーターシリーズは独自のドラッグイメージで固定のファンがいたバイクではあるが、世間のアメリカンバイクブームというのは営業的には見逃せない要素だったことだろう。そしてその条件として、V型エンジンの搭載というのは必須条件だったのではないだろうか。ただ、その新しいエリミネーター250Vのエンジンにどれ程力が入っていたかは、水冷V型DOHC4バルブエンジン249ccが専用開発されたことを見れば明白だ。このエンジンは35PS/12500rpmの最高出力と2.4kg-f/9500rpmを発揮し、250ccクラスのクルーザーモデル最強を誇っている。このエンジンスペックからしても、カワサキはこのバイクを「クルーザー」よりも、「ドラッガー」のコンセプトを受け継いだ車両という位置付けに置きたいと考えていたと思われる。 当然元の並列2気筒エンジンや、並列4気筒を搭載するといったことも検討されたと推察するが、先行して発売された各社の250ccクルーザーの中ではホンダのVツインマグナの人気が高く、このマグナが1994年発表ということを考えるとエリミネーター250Vの方向性に影響を与えた可能性は高い。