「大人たちが玩具を買って楽しんでいる」 おもちゃ市場“1兆円超え”の意外な理由
少子化で最も影響を受けそうな業種の一つ、玩具業界が活況を呈している。 *** 【写真をみる】「今ってこんな感じなの!?」 驚きの進化を遂げた“おもちゃ”の数々
一般社団法人日本玩具協会などの調べでは、国内の玩具市場の規模は2000年度から20年間は7000億~8000億円台前半で推移。それが21年度に8900億円超、22年度に9500億円超。23年度は1兆193億円と大台を突破した。0~14歳人口が04年度の1773万人から23年度の1417万人まで一貫して減少していながらだ。 「成人人口の結構な割合が玩具を買って楽しんでいると推測されます」 とは日本玩具協会見本市委員会の藤井大祐専門委員。業界誌「トイジャーナル」によると、23年、成人1万4000人を対象に行ったアンケートで41%が「自分が楽しむための玩具を買ったことがある」と回答。玩具業界では、こうした「子供心を持つ大人層」はキッズとアダルトの語を足した「キダルト層」とも呼ばれ、メーカーは彼らに向けた商品開発に注力しているのだ。 「日本では子供の時分からアニメ、ゲームなどに触れてきた世代が大人になり、玩具への抵抗が少ない。1990年代後半には玩具を楽しむ大人の姿も普通のものとなりました」(同)
「たまごっち」に「リカちゃん人形」も
好例が96年登場のバンダイ「たまごっち」。画面の中の生き物を育成するゲームに誰もが夢中になった。 「また、ガチャガチャなどでも技術の進化を受けてリアルな造形や彩色のアイテムがどんどん投入され、全体のクオリティーが格段にアップしたことも、大人が玩具を楽しむ一因になりました」(藤井氏) 近年はカードゲームやボードゲームの世界で、大人まで楽しめる商品の進化、充実ぶりが目覚ましい。 疫病を防ぐ、火星を開拓する、スパイを摘発するといったシナリオをベースにしたもの、しりとりや布のパッチワークで遊ぶものなど硬軟にわたり数限りない。 もともとは子供向けだった「リカちゃん人形」(タカラトミー)にも、大人向け商品「フォトジェニックリカ」が登場。関節を曲げ、多様なポーズをとらせてSNSにアップするのがブームになった。リスやウサギのお人形が愛らしい「シルバニアファミリー」(エポック社)では、動物たちの「赤ちゃんコレクション」が発売された。中身の分からないブラインドパッケージ形式のため、まとめ買いする大人までいるとか。 「長い在宅時間を過ごしたコロナ禍をきっかけに、家の中で遊ぶことに目覚めた層も多いようです」(同) 玩具の主役も大人の時代。
「週刊新潮」2024年12月12日号 掲載
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