【試乗レポート】「おぉ」思わず声が漏れるアストンマーティン「DB12」、100km走って納得した「かっしり」感
■ 乗り味はガッシリではなく「かっしり」 都心部の一般道で感じるのは、ドライバーとクルマとの一体感からくる、扱いやすさだ。 全幅2m超えでロングノーズ、かつスポーティな着座位置だが、前方に対する見切りが良く、安心して乗ることができる。 乗り心地も、想像以上に良い。外観からの印象では21インチタイヤの存在感が大きく、ハーシュネス(路面からの突き上げ)は決して大きくはないとしても、それなりに感じるのではないかと想像していたからだ。 これは仏ミシュランタイヤがDB12向けに設計要件をカスタマイズしたパイロットスポーツの効果が大きい。 ガッシリではなく「かっしり」とした乗り味だ。 タイヤやサスペンションの動きだけが目立つのではなく、クルマ全体を意識したタイヤ設計であるため、クルマ全体とタイヤとの一体感があり、それがドライバーにダイレクトに伝わる。 ドライバーにほどよい緊張感を与え、気持ちが引き締まる感じが実に心地いいのだ。 こうしたDB12とドライバーとの一体感は、高速道路に入り速度域が上がると、さらに高まっていくのが分かる。 特に、東京湾アクアラインを走行している際の気分は、まさに「スーパーツアラー」。
■ 「もっと遠くまで走っていきたい」 秘めたパワーを感じながら、クルマにとって技術的な余裕があり、かつドライバーにも心の余裕が生まれ、「もっと遠くまで走っていきたい」という感情が湧き上がってきた。 郊外に出てから、ワインディング路を走ってみると、さらにクルマとドライバーとの一体感が高まり、DB12は扱いやすく、走ることが楽しい。 技術的には、リアデファレンシャルギアを電子制御することで、後輪それぞれのトルク配分を最適化している効果が分かる。これは路面がぬれた状態や、サーキット走行向けで4つのモードに切り替わる仕組みだ。 近年、ハイパフォーマンスカーの多くが電子制御を駆使して、日常生活の利用場面からサーキット走行まで、様々なシーンを想定したクルマの基本設計を行うようになっている。 アストンマーティンDB12は、飛び道具を使うことなく、メカニカルな基本構造を重視した上で、そこに最新技術を組み合わせるバランス感がとても良い。 アストンマーティンの設計思想は、技術ありきではなく、あくまでも「ドライバー中心」。それを貫いた形が、DB12なのだと思う。 こうしてDB12との楽しい時間を過ごして、都心に向かう帰路で、筆者がこれまで実体験として見てきたアストンマーティンとの思い出が蘇ってきた。