[リトアニアへの旅]ユネスコのモダニズム建築都市、カウナスを歩く。
2023年9月、リトアニア第二の都市カウナスがユネスコのモダニズム建築都市として登録された。第一次世界大戦中、ポーランドに占領された首都ビルニュスに代わりカウナスが臨時首都となると、独自のモダニズム建築が一気に1万2,000棟も建てられた。
通常、貴重な歴史的建造物は文化財や美術館となってしまうことが多いが、カウナスではいくつかの建物が現在も使われているというから驚きだ。クールなカウナスの街並みと人々の暮らしをのぞいて、最後に究極のパワースポット「十字架の丘」を訪れた。 第一回:リトアニアへの旅。サウナにハーブティー、暮らしに息づく聖なる伝統に触れて。https://madamefigaro.jp/lifestyle/travel/240115-Lithuania-travel.html
カウナスがユネスコデザイン都市になった理由。
カウナスは、首都ビルニュスから北西へ約103km、車で1時間20分の距離にあるリトアニア第二の都市。ネームナス川とネリス川に挟まれた場所に位置し、西側は旧市街、東は新市街となっている。聖ミカエル教会からまっすぐに大通りが延び、その両側に建物が整然と並ぶ端正な印象の街だ。 1919年から1940年の間、暫定的に国の首都となったカウナスは、ロシア行政下の小さな町からヨーロッパ他都市に匹敵する近代都市への変化を迫られた。当時ヨーロッパ各地に住んでいたリトアニア人建築家や専門家たちがカウナスに集められ、都市の中心部に政府機関や大学、ホテル、住宅などが建てられた。
ユネスコのデザイン都市登録となったのは、20年以内という短期間に形成されたモダニズム建築都市であること、そして新たな首都を造るため、近代的な方法とリトアニアの建築スタイルが融合し、独特な都市開発へと発展していったこと。このふたつが大きな理由だ。 かつてカウナスの街を形作っていた建築スタイルとは、古典主義、バロック主義、過去の西洋建築様式を復古的にモデルとする歴史主義などの歴史的建築様式。そこに、フォークアートや国のシンボル装飾の要素などが巧みに取り入れられ、ややエスニック的な印象を与えている。 カウナスの都市景観は「多様なモダニズム様式の融合」が大きな特徴。幾何学的なアールデコの美学や、シンプルで機能性を重視するバウハウスなどの要素を含みながらも、明確な様式区分はなく、むしろさまざまな影響が調和しているところが大きな魅力だ。