“SFのハヤカワ”で読む最先端テクノロジー(レビュー)
ブームものに良作なし。たとえば今なら教養だDXだ円安だといった流行りのテーマを看板に掲げて売り出される本の山はたいてい、9割以上の駄作(内容極薄)と1割未満の傑作(たいてい読みづらい)に分かれ、どちらでもない良作(濃さも読みやすさも適度)は、傑作より少ないくらい。 AI本も例外ではないんだけれど、この『AIを生んだ100のSF』は例外的な良作。はい、傑作とは言いません。中身のメインは研究者11人のインタビュー集(大半が「S-Fマガジン」の再録)で、1冊を通して話が深まっていくわけではないし、彼らの専門分野は狭義のAIに限られずVRやメカトロニクス、認知心理学、その他いろいろ幅広いから題名にもやや偽りあり(監修者・編者だって慶應SFセンター所長の大澤博隆以下6人! )。 が、だからこそ気軽に読めてわかりやすいという利点は大きく、この新書、先端的な科学&技術のありようを、SFを通じて体感・把握するための窓として間口が広く敷居が低い(研究者たちが挙げるSFからして『ドラえもん』から『日本沈没』、アシモフからピンチョンまで多種多様)。 空想科学方面に興味の薄いアナタ向きではないと誤解されがちな書ながら、その手の知り合いたちに薦めていたら大感謝してくれた人がいて、彼は巨額の資金を運用するファンドマネージャー。世のなかを読むうえで欠かせない科学・技術の動きを見極めるための切り口が満載なんだそうな。 [レビュアー]林操(コラムニスト) 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
新潮社