モーニング娘。'24が『THE FIRST TAKE』で見せた“歌って踊る”というプライド
スキルフル、だがそこだけにはとどまらない魅力
『THE FIRST TAKE』でのモーニング娘。'24のパフォーマンス、まず目を引くのはハンドマイクで歌い踊るその姿だろう。 『THE FIRST TAKE』では前述のとおり、スタンドマイクでのパフォーマンスがほとんど。過去に三浦大知がハンドマイクで登場し、踊りながら歌っていたが、体を動かしながら歌声を安定させるには高い技術力が必要とされる。モーニング娘。'24をはじめとしたハロプロ系アイドルグループは、コンサートなどではハンドマイク歌唱がデフォルトであり、ハロプロファンにとっては日常の光景なのだが、こうした外部の現場ともいえる環境においては、その希少性が立ち上ってくる。パフォーマンスに重きを置くハロプロの伝統とプライドが象徴されているともいえるだろう。Xでは「#TFT歌いながら踊るモー娘」というハッシュタグが流れていた。 またパフォーマンス時のフォーメーションも、今回のために用意された特別なものだという。メンバー13人が3人/3人/3人/2人/2人に分けられ、前列左右中央、後列左右の5ブロックという構成の布陣。斜め上から捉えたショットでの左右対称かつ一画面に収まったルックが美しく映えている。しかも、1曲の中における各ポイントでメンバーの立ち位置が次々と入れ替わるのだ。 全体的に非常にスキルフルなのは間違いないのだが、一方で、その評価軸では収まりきらない魅力も表出している。たとえば2番サビ前(2:54あたり)での昨年加入した17期メンバー 井上春華のダンスは、ほかのメンバーと比較すると若干の荒々しさを感じる。また、一番最後に〈LOVE REVOLUTION 21〉と歌うとき(4:15あたり)の井上の腰が、ほかの全員よりも沈みが深い。これらは「全員揃っているのが正解」という観点から見れば不正解の部類なのかもしれないが、別の観点から見れば、どちらも勢い余った上での動きにも見え、「はるさん、その意気やよし!」と言いたくなるようなパフォーマンスである。 こういった良い意味での凸凹感は、2000年の同曲リリース時の10人体制を彷彿とさせる。4期メンバー加入直後で、リーダーで最年長の中澤裕子がいて、エース格の安倍なつみや後藤真希がいて、末っ子の辻希美や加護亜依がいる……といった、ある意味奇跡のようなバランスで成り立っていた。「恋愛レボリューション21」はそんな時期を象徴していたシングル曲であり、それが20年以上のときを経て、まったく別のメンバーでまた違った形の高みを見せてくれた。今回の『THE FIRST TAKE』登場の意義はそこにあると感じている。動画再生数は本稿執筆時点(12月4日)で320万回。まだまだ多くの音楽ファンに観てほしい映像である。