力学の専門家が説く「割り箸をキレイに割るコツ」 ポイントは「水平」「利き手」「指3本」にあった
──続いて、“割り箸の先端から指3本分くらいの位置”というアドバイスの真意は?指2本分や4本分ではいけないのでしょうか? ■なぜ“指3本分くらいの位置”を狙うのか? 「繰り返しになりますが、割り箸は製造上のばらつきで、2本のどちらかが太く、もう片方が細くなっています。先端に近すぎる位置から引っ張ると、太さの違いによるアンバランスで応力が斜めに傾いてしまい、上手く割れないのです。 逆に根元側から引っ張ると、割るのに強い力が求められるため、ゆっくり静かに…とはいかなくなります。私もいろいろ試行錯誤したところ、応力が釣り合うためには、“先端から指3本分くらいの位置”がちょうどよいと判明しました」 ──自分は今まで、割り箸の先端に近い位置を、スパッと勢い任せに引っ張っていました。何もかも間違っていたとは…。応力と聞くと身構えてしまいそうになるものの、手順は意外とシンプルですね。 「この“ワザ”は、食べ物に詳しい人でも知らないことが多いですよ。もっとも、安くて粗雑な割り箸だと、きれいに割れないこともあるのですが…」 ■左右ではなく上下に割るべき“納得の理由” ──ところで、割り箸を縦に持って左右に割る場合でも、今のワザは応用できるのかどうか気になります。 「同じように“ゆっくり静かに”を実践できれば、左右に割っても成功の可能性はありますが、オススメはしません。 なぜなら割り箸を縦に持つと、支えるほうと引っ張るほうとで、手の動きを左右両方とも気にしないといけないですよね。これは人間工学の観点からいうと、水平に持って上下に割るときに比べ、力のコントロールが難しくなってしまうのです」 そもそも割り箸を左右に割るのは、隣の人や近くの食器に手が当たって迷惑になるかもしれないため、マナー違反だという声もある。割り箸を水平に持って割るのは、マナーの面でも、そして材料力学や人間工学の面でも合理的なようだ。 古川さんへの取材を終えてからというもの、割り箸を割るときは脇を締め、利き手をしっかり固定するクセが身についた。そして「指3本分、指3本分…」と心の中で唱えながら精神統一し、反対の手で、そっと箸をつまみ上げていく。パキッと軽やかな音が響き、美しい断面が顔を見せてくれたときの爽快感はたまらない。 自己満足といえばそれまでだろうし、つい先日も、不格好に割れてしまい「今日は不吉ですね」と人に笑われたばかりだ。ただ、回数を重ねるごとに“ワザ”の精度が高まっていくのがわかり、日々の食事とチャレンジを楽しめている自分がいる。あのラーメン店での悲劇は、もはや喜劇と割り切ってしまおう。
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