日銀・黒田総裁会見7月30日(全文1)量的・質的金融緩和を継続
景気の拡大基調が続くと見られる
先行きについては当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021年度までの見通し期間を通じて景気の拡大基調が続くとみられます。輸出は当面弱めの動きとなるものの、海外経済が総じて見れば緩やかに成長していくことで基調としては緩やかに増加していくと考えられます。国内需要も消費税率引き上げなどの影響を受けつつも極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に増加基調をたどると考えられます。今回の成長率の見通しを従来の見通し比べますとおおむね不変です。 次に物価面では、消費者物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きが続いています。中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移しています。先行きはマクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続く下で、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し家計の値上げ許容度が高まっていけば実際に価格引き上げの動きが広がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられます。この結果、消費者物価の前年比は2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。今回の物価見通しを従来の見通しと比べますとおおむね不変です。 リスクバランスや経済の見通しについては海外経済の動向を中心に下振れリスクのほうが大きいと考えています。また物価の見通しについても経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから下振れリスクのほうが大きいとみています。2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、物価安定の目標の実現には時間が掛かることが予想されます。なお、展望レポートについては片岡委員が、消費者物価の前年比について先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対されました。
現在の極めて低い長短金利の水準を維持
日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。政策金利については、海外経済の動向や消費税引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。今後とも金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。 以上に加え、今回の会合では経済・物価の下振れリスクが大きい現下の情勢における日本銀行の金融政策運営方針を一段と明確にすることとしました。すなわち、特に海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きい下で、先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じることを示しました。 日本銀行としてはこれまで同様、金融政策運営の観点から重視すべきさまざまなリスクを注意深く点検し、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるリスクの顕在化を未然に防ぐために必要と判断する場合には、ちゅうちょなく政策対応を行う方針です。