TikTokではじまるファンコミュニティ 50歳のダンス女性や、ホタテ漁師を熱烈応援
そうした小さなファンコミュニティやファンエコノミーは各地でできているという。2013年に始まった、アーティストやクリエーターの収益化を支援するプラットフォーム「Patreon」は、2020年に600万ユーザーを達成、同年9月に900万ドルの資金を調達した際の評価額は12億ドルと、いまではクリエイターエコノミーの代表格だ。「Twitch」というライブストリーミングサービスは、世界ではYouTube、Instagramに次ぐ市場規模を占めている。 ただし、こうしたファンコミュニティにお金が絡むときには、注意が必要だ。前出の漁師・匡哉さんは現在の事務所に所属する以前、ある有料配信ライブプラットフォームで月に100万円近く稼いだときがあった。TikTokよりはるかに投げ銭の金額が大きかったからだが、ある日、参加者しているファンの女性の間で揉め事が起きた。 「ある時、Aさんが高価なアイテムを僕に送ると、すかさずBさんが同じアイテムを送るという流れがありました。Bさんは競争していたつもりではなかったようですが、Aさんはそう思い込み、ちょっとした騒ぎになってしまったんです」(匡哉さん) これはリスクが高いと学んだ匡哉さんは、そのサービスの利用をやめた。トラブルをオンタイムで目撃していた前出のあやかさんは、落ち込んでいた匡哉さんを心配して、応援の気持ちで高価なアイテムを奮発して送ったという。それでは同じ有料配信トラブルという火に油を注ぐような行為にも映るが、自分の思いはまた別にあると話す。 「私自身30代になり、『自分の人生をかけて夢を追う!』というのがない。その分、匡哉の夢を応援したい。その夢がかなうのに立ち会いたい気持ちがあります」
まさに前述の「自己投影」のような行動だった。オシロの杉山さんは、ファンがそのように思うのは当然のこととして、「表現者はお金とエールがないと、活動を続けていけないのです」と説明する。 「『いいね!』だけではそれ以上にはならないけれど、100円をいただいたら100円という応援の重みがずしりとあるものなんです。エールの具体的な形としてお金が存在しているだけ。表現者にとって最初の一歩はお金もうけではなく、表現活動を続けていくガソリン、原動力なんです」