TikTokではじまるファンコミュニティ 50歳のダンス女性や、ホタテ漁師を熱烈応援
匡哉さんのファンも熱心な人が多い。「顔が好きだけど、性格が明るくて、失敗を恐れないところもカッコいい」と言うのは、埼玉に暮らすツアーコンダクターのあやかさん(30代)だ。 2020年3月、コロナ禍のため会社が休業。暇な時間が増えて、TikTokを見るようになり、「ハマった」のが匡哉さんだった。それまでテレビを持っていなかったが、今年7月、夫に内緒でポータブルテレビを購入した。匡哉さんが出演する地上波の番組をオンタイムで見るためだ。 「匡哉ってちょっとおバカじゃないですか。LIVE配信中、去年の税金が数十万円だったと支払い調書を見せてくれたときには、ばっちり住所が映っちゃってて。そういう抜けたところも、匡哉の愛すべき魅力なんですよね」 匡哉さん製作による、「ほたて」「道東の漁師」という文字がプリントされたTシャツも購入した。ファン同士、同じものを着ることによって得られる連帯感があるという。
関西在住の医療従事者さえこさん(30代)も「初めてあの子がつくった作品だから」とこの春、Tシャツを購入した。仕事中に着ていると、「それ、なんのTシャツ?」と尋ねられ、会話の糸口になっているという。 「顔と体形が好みでファンになったんですが、ハマったのはLIVE配信。配信中にトイレに行ったり、パンツ一丁でお酒をがばがば飲んでいたり。自由気ままに素を出しているのがよかった。親戚のおばちゃん感覚で見られるというか、応援したくなるんです」
応援したい気持ち=お金を還元したい
「一生懸命やっている人に、人は心を動かされる。応援したいと思う。ファンになるというのはそういうことだと思います」 そう語るのは、オシロ株式会社代表取締役の杉山博一さん(48)だ。同社はアーティスト・クリエーターやメディア、ブランドなどのファンコミュニティに特化したシステムを開発し、醸成サポートまでを事業として行っている。昨今では有名無名ということにとらわれずにファンがつく現象が珍しくないらしい。 「人には全員、もって生まれた表現欲求があり、自分の個性をそのまま体現しても受け入れてもらえる時代になりました。これはプラットフォームが多様化、簡略化したおかげです。そういう場に、自分がかつて目指した夢を懸命に追いかけている人がいたら、有名無名を問わず応援したいと思うのが常ではないでしょうか。自己投影というか、一つの自己実現にあたるのではないかと。コアなファンによって表現者の経済が支えられるという図式も、テクノロジーの進化により直接課金する流れが加速しているだけで、基本的な心理は昔と変わらないと思います」