TikTokではじまるファンコミュニティ 50歳のダンス女性や、ホタテ漁師を熱烈応援
男性ファンが語る「かずさんの魅力」
初期からのファンであるタケさん（52）は、その魅力を「主婦で子持ちでアイドルというギャップ萌え」と解く。金融業界勤務のヒロさん（52）は「僕にとっては理想の奥さん。美人で、子どもにやさしく、裏表がない。芸能人のようなつくられたものとは違って、内面にささるんです」と語る。 TikTokにはリアルタイムで配信を行うLIVEもある。かずさんも試したところ、その初回で「ギフト」と呼ばれる投げ銭が続々と送られてきた。「ダンス動画を無料でずっと見せてもらっていたから、みんな、ようやくお礼ができたという感じだったと思います」とヒロさんは言う。 これまで25回ほど行ったLIVEでの収入は合計35万円ほど。金額以上に、彼らの気持ちがうれしいとかずさんは言う。 「ここで稼ぎたいというつもりはないのですが、反応が見えるのはとてもうれしいです。モチベーションにもなりますね」
漁師とタレントの二刀流を目指して
波しぶきをあげながら海を突き進む漁船。動画が始まると、甲板上で若い男性漁師が「きみのとりこになってしまえばきっと～♪」という歌（「Summertime」）に合わせて、軽快なダンスを披露する。胸板の厚さや肩の筋肉と、少年のような笑顔とのギャップが目を引く。 別の動画では、甲板上でホタテの山を一瞬で選別していく華麗な手さばきも見せる。コメント欄には「ヤバ、格好いい 惚れた」「男の俺でもかっこいいと思った」と絶賛のコメントが並ぶ。投稿者は「道東の漁師」こと金津匡哉（かなつ・まさや）さん（23）。フォロワー数は71万を超える（2021年11月8日時点）。TikTokでの人気ぶりから、東京のタレント事務所にスカウトされた。
初投稿は2020年3月、自室で歌を歌った。同年7月、ダンスを投稿すると30万ほどのハート（いいね）がついた。人気に火がついたのは船上でのダンス。フォロワー数が10万人を突破し、固定ファンがつくようになった。さらに、「企業案件」と呼ばれる広告的な相談も入りだした。 「最初はホワイトニングなどの美容系、競馬ゲームなどの話があり、さらに超大手の音楽会社からも『この曲をかけて何回踊ってくれたらいくら』というオファーがありました。『え、めちゃ有名な会社じゃん！』と驚きましたね」 8月、東京の複数のタレント事務所からスカウトの連絡があった。12月にはフォロワーが40万人を突破。年が明け、今年4月に上京した。いったんは漁師をやめる覚悟だったが、思い直し、現在は東京ではタレント活動、北海道では漁師として働く“二刀流”を続けている。 「漁師の仕事に誇りをもっているし、タレントとして成功したら、地元の魅力を広めていきたいと思っているんです」
