パンや菓子にも…「海藻」新たな味わいを楽しむ
◇ パンや菓子などへの活用も広がる。神奈川県鎌倉市のパン店「ブレッド イット ビー」は、トサカノリ、若ヒジキなどの3種を混ぜ込んで焼く硬めのパン「渚のリュスティック」(1個420円)を11月下旬まで販売する予定だ。磯の風味と岩塩が食欲をそそり、「焼くと風味がさらに際立つ。お酒のつまみにもよい」と店主の森田良太さん。 陸上養殖の「南伊勢マリンバイオ」(三重)は、バレンタインデーに合わせ、スジアオノリなどを使った冬季限定のチョコレート「茶青」(1150円)の予約を11月中旬から受け付ける。ホワイトチョコの甘みの中にスジアオノリのほのかな塩味、すがすがしい磯の香りが加わる。
未利用の海藻を活用するのは北海道函館市の「野村水産」。北海道や東北などの太平洋側に生育する海藻「ダルス」は昆布の養殖ロープなどに自生する厄介者だったが、栄養価が高い食品として近年、欧米で食されていることに着目し、17年につくだ煮を発売した。磯の香りが強く、あっさりとした味付けが特徴だ。 岡田さんは、「より多くの人に食べてもらうために、昆布やノリなどを使った昔ながらの食べ方にとどまるのではなく、各地の海藻と様々な食材や料理を組み合わせて新しい食文化を提案することが重要になる」と話す。
日本に1500種生息、食用は30種
国立科学博物館植物研究部(茨城県つくば市)で海藻を研究する北山太樹さんによると、海藻は世界に約1万3000種が知られ、日本に生育するのは約1500種。そのうち、食用として全国的に流通するのは30種ほどで、これほどの海藻が流通し、各地の料理に取り入れられている国は珍しいという。 東北の「マツモ」や山陰の「ユナ」など、特定の地域で食用にされる海藻も30種ほどあるとみられるが、日持ちしないことなどから他の地域に出回りにくい。「その地域だけでの呼び名があるなど海藻と地域の食文化は密接に関連している」と北山さん。 近年の養殖や保存の技術革新により、日本海側で食されていたアカモクが全国的に注目されるなど、地方の海藻食文化が広がった事例がある。 北山さんは、「いまだに新種が発見されるなど海藻の世界は奥深い。新たな海藻食が地方から広がり、注目されていく可能性もある。海藻を食べることは人の健康や海の環境保全にもつながるだろう」と話す。 ◇ フェアでトサカノリのシソスカッシュを試飲した。ゼリーのような食感と鮮やかな紅色はスイーツと相性がよいと感じた。海藻は空気中の二酸化炭素を固定・吸収する役割のほか、人口増による食料問題への対応策としても注目されている。海藻の様々な可能性を感じた。(山田) ※商品の情報は、記事配信時点のものです。