町田だけじゃない「J1、なでしこ、JFL首位チーム」シン・快進撃の舞台裏(3)C新宿戦「試合は生き物」論で快勝、日本サッカー強化に「不可欠」な挑戦
現在、J1リーグに新たな風が吹いている。初昇格したばかりのFC町田ゼルビアが、折り返し地点を迎えても首位に立っているのだ。こうしたフレッシュな話題は、他のリーグにもある。なでしこリーグのヴィアマテラス宮崎と、JFLの高知ユナイテッドSCの「シン・快進撃」の秘密を、サッカージャーナリスト後藤健生が探る。 ■【映像】「試合は生き物だから」と語る高知U吉本監督の采配ズバリ【C新宿×高知U】激闘ハイライト
■組織的な守備からの「カウンター」が威力を発揮
立ち上がりはクリアソン新宿がボールを握って、CKのチャンスを何度も作った。それに対し、高知Uは守備を固めた。 4人のDFラインがフラットにそろっていたし、中盤の4人も選手間の距離がきちんと保たれ、選手同士が距離を縮めることによって相手のボールに網をかけていく。非常に組織化された守備だった。 先制ゴールは17分に生まれた。 C新宿がつなごうとしたパスを高知ユナイテッドSCがカットして、小林心が緩急のリズムの変化で相手のアタックをかわしながら、そのまま一挙にドリブルで中央を持ち上がる。そして、小林は右に大きく開いて、そのまま一気にゴール前に上がり、右からのクロスを頭で決めて見事なカウンターを決めた。 さらに、22分、同じように自陣でボールを奪った高知Uは、右サイドバックの吉田知樹がドリブルで上がり、ボールは樋口叶を経由して小林に渡る。すると、C新宿のDF相澤佑哉がファウルで小林を止め、決定的得点機会の阻止で一発退場となった。 高知Uは、組織的な守備でボールを奪ってカウンターという形で1ゴールを決め、相手DFを退場に追い込んだのだ。
■同点とされるも「戦い方を変化させていった」
しかし、C新宿はすぐにDFを投入して、5-3-1のような形で守備を固めてきたので、高知Uはそれまでのようにカウンター主体の戦い方ができなくなってしまった。 案の定、高知は圧倒的にボールを握り続けたものの、効果的な攻撃ができず、さらに、38分にはCKからC新宿の米原祐に決められて同点とされてしまったのだ。 「さて、どうするのか……」 だが、高知Uはけっして焦ることなく、次第に戦い方を変化させていった。 後半に入ると両サイドバックを高い位置に張り出して、相手の守備をピッチの幅いっぱいまで広げ、左右からのクロスを入れ続ける。そして、62分にアタッカー2人を交代させて、攻撃の圧力を高めていった。 すると、選手交代直後のCKから2点目が生まれた。交代で投入された金原朝陽のCKは跳ね返されたものの、拾った金原が入れたクロスを宇田光史朗が決めて勝ち越し、さらに72分には佐々木敦河がミドルシュートを決めてC新宿を突き放した(87分にも、内田優晟が5点目を追加)。 「試合は生き物だから」と語るのは、高知Uの吉本岳史監督。高知出身で、名古屋グランパス、水戸ホーリーホック、横浜FCで活躍した指導者だ。 吉本監督は、選手個々のストロングポイントを発揮させ、チームのやり方を固定したりはせずに、相手によって、試合展開によって使い分けるのだという。 実際、C新宿戦ではカウンターから先制し、相手が少なくなって攻めあぐねながらも、次第に攻撃の形を変化させ、そして交代をうまく使って勝負を決めた。まさに会心の勝利だったはずだ。
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