東北高校時代（本人提供）

故郷の大阪から東北高校への野球留学を決めた際は、「宮城県は遠いと思ったんですけど、ダルビッシュ有さん（の母校）やと言われて。ダルビッシュさんの顔は知っていたんで、おー、行く行くと」。好きな野球選手を問われても、「強いていうなら鳥谷敬さんですかね。プレーがどうこうではなく、鳥谷さんの私服、格好いいじゃないですか」。野球だけではなくボクシングも取材する筆者に対しては、「野球選手よりも井上尚弥さんに会わせてください」と目をキラキラさせて言ってくる。ハングリーなスポ根の主人公ではない。西田の言葉の端々からは、楽しむのが好きで、少しやんちゃで行動力にあふれた若者の姿が浮かんでくる。

出場かなわなかった甲子園　でも「日本の高校野球はやるべき」

2019夏の甲子園・宮城県大会での西田選手（左から2人目）　写真：日刊スポーツ/アフロ

もっとも、西田にはベースボールに対する真摯な思いが欠けているかといえば、決してそうではない。興味、関心が若くして野球だけに限定されていないというだけで、聡明な若者はこのスポーツのことも熟知している。 　東北高校時代は打者として活躍するも、前述の通り、日本の球児の夢である甲子園出場はかなわなかった。それでも高校時代を通じて、「甲子園を目指す」というプロセスが大好きになったとか。日本特有の長時間の練習に思うことはあったというが、それを敢然と否定しているわけでもない。先輩、監督にも納得できないことは意見するぶれない姿勢が同期、後輩たちに支持され、選手間投票で副主将に選ばれて完全燃焼した。 「やっぱり日本の高校野球はやるべきやなと思います。今、やっている本人たちはたぶんあまり気づいてなくて、ただ甲子園で注目されたいという気持ちなんでしょう。でも、自分はめちゃくちゃいい経験になりました。練習時間に関しても長く、短く、両方やってみることでいろいろと気づくと思うし、たまには長い練習も必要やと思います。自分も日本の野球は素晴らしいと思っています。それを生かしつつ、進化していかないと」 　そういった言葉からも、西田の野球IQ（チーム全体の状況を理解し、次に何をすべきかを把握できること）の高さ、コミュニケーション能力は伝わってくる。