銀行・証券・リース・保険…「生成AI」取り込む、金融業界それぞれの現在地
銀行 経営計画の柱に位置付け
金融業界で生成人工知能(AI)の活用が広がっている。業務効率化やコスト削減が狙いだ。金融機関は取引に伴い、膨大な事務処理が発生し、負担が大きい。生成AIで生産性を向上させる余地は大きく、顧客サービスの向上への期待も高い。新ビジネス創出にもつなげる方針で、最新技術の取り込みを急いでいる。 【写真】保険会社が構築したゲーム機能を実装した生成AIのシステム 大手銀行が生成AIの利用を推進している。みずほ銀行は顧客の問い合わせに応じるコンタクトセンターに生成AIを導入し、業務効率化を図っている。三井住友フィナンシャルグループは生成AIの投資枠として2026年度以降の次期経営計画期間も含めて500億円を設定した。三菱UFJフィナンシャル・グループもAI活用の拡大を経営計画の柱に位置付ける。 みずほ銀は国内4カ所のコンタクトセンターに生成AIを活用した新システムを導入し、運用を始めた。情報の一元化、ペーパレス化などにより有人の応対業務の生産性を向上させる。通話時間を2割程度削減し、全体で3割程度の業務効率化につなげる。 オペレーターと顧客とのやり取りは全て生成AIによって文字起こしされ、パソコンの画面に表示される。生成AIが資産運用サービスの案内用資料などを提案してくれる機能もある。今後は入電量を予測して最適な人員配置の実現につなげるほか、顧客の声を分析し商品やサービスの課題を抽出して改善に生かす。
証券 顧客サービスの質高める
証券各社は生成AI活用で生まれた時間を高付加価値の業務推進や顧客サービスの質向上に充てる。 SMBC日興証券の社内ポータル「マイバディ」はキーワードを入れると生成AIがメール作成や文書の要約、翻訳を支援する。同社では1人当たりの年間業務量を約70時間減らせると見込む。野村ホールディングスは23年にチャットGPTを社内で利用できる環境を整えた。議事録作成などに使用し、「生産性向上で時間創出が進んでいる」(同社)という。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券も文書検索などやスケジュール調整で生成AIを使用している。大和証券は電話による顧客の問い合わせに生成AIが会話形式で答える「AIオペレーター」を始めた。貯蓄から資産形成への流れを背景に顧客からの問い合わせ増が想定される中、顧客の待ち時間を減らし、コールセンター業務の省力化につなげる。 みずほ証券は社内ルールやマニュアルなどの社内文書を生成AIで検索できるシステム「MOAI(モアイ)サーチ」を自社開発した。同社ではモアイサーチをはじめ生成AIに関する知見について、資本業務提携する楽天証券とも相互に情報交換する。