引退から「四半世紀近く」経つのに突然生き生きと語りだす...「伝説の一条」を記者も驚愕の「ストリッパーの顔」にした意外な人物
一条を支援するカメラマン・加藤詩子
加藤はたこ焼きを買ってきていた。私が爪楊枝でそれを食べていると、彼女が自己紹介した。 「カメラマンとして最初、滝優子さんの写真を撮っていたんです。滝さんは(西成にあったストリップ劇場の)関西ニューアートやキャバレーに出ている人です」 一条はにこにこしながら聞いている。加藤は時折、一条のほうに視線を向ける。 「滝さんは一条さんを尊敬していて、会いたがっていたんです。私も一条さんのことが気になって、稲垣さんを通して写真撮らせてほしいと頼んだのが最初です」 加藤は数日前、滝をこのアパートに連れてきた。一条は踊りについて話せたのを喜んだ。 「(踊り子に)会うとやっぱり踊りを思い出すね」 加藤が滝について説明する。 「独特の信念もっている人です。今はベッドショーでも、演じる人がほとんどで、女の情念をさらけだせる人は少ない。滝さんはそういうことを信念としている人です」 一条が後を説明するように語った。 「なかなかしっかりしていてね。(自分と)通じるものありますよ。ステージに上がった以上、お客さんを自分の主人と思わなあかん。ロウソクは熱いけど、熱さに色気があるからね。熱いと感じないで自分が恍惚になる。自分が本気になると、見てる客もその気になる。お客にため息つかさなあかん。あたしのときは、お客が一回一回ため息ついた。やっているときは熱さを感じないけど、後から熱さで汗がしたたり落ちるんよ。今でもステージに上がりたいと思うこと、ありますよ」
ストリッパー時代を懐古する一条
ストリップの話題になると、彼女の声には急に力が入る。 「一緒にやったなかで有名やったのは桐かおるさん。踊り子として、全国を回り出してから知り合いになった人です。そのほかには公蘭妃さん、都ますみさん、桜千代美さん。いい踊り子さんがいました。懐かしいわ」 踊り子として過ごした時間がよほど充実していたのだろう。滝と会ったことで、その記憶が呼び覚まされるのか、一条はかつて一緒に舞台に立った女性について解説する。聞いたことのない名ばかりである。とりとめのない話は続く。 「『ビーナスの像』ってのがありました。1人でポーズとったり、3人ぐらいでポーズとったり、そんなんですわ。それが済んだら横から5、6人が出てきて踊りが始まるの。マンボ調の音楽なの」 加藤がうれしそうにうなずいている。私がたこ焼きを食べていると、加藤が冷蔵庫から麦茶を出してくれた。 『「生活保護で酒を飲むのが恥ずかしい」「生活が苦しい」…「月10万の生活保護」で暮らす女性を苦しめた“習慣”と“スティグマ”』へ続く
小倉 孝保(ノンフィクション作家)
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