地球のS極とN極、4万年前は違った?…「地磁気極」変動の研究成果を紹介
約4万年前の地球環境をテーマにした特別展「ナウマンゾウやネアンデルタール人が見た夜空」が、福井県年縞(ねんこう)博物館(若狭町)で開かれている。同館そばの水月湖を舞台にした地球史研究の成果のうち、オーロラの発生位置にも関係する「地磁気極」が大きく変動したという解析結果を紹介。地磁気極が北極と南極付近にある現代と対比させている。来年1月6日まで。(浜崎春香)
地球は大きな磁石になっており、その磁場の極を地磁気極と呼ぶ。現代はS極が北極、N極が南極の近くにあるため、方位磁針のN極が北極の方向を指すが、約78万年前以前は南北が逆転していた。他にも、S極が南半球まで移動する「エクスカーション」(周遊旅行の意)が何度か起きたことが知られている。
水月湖の地層「年縞」には、鉄を含み磁気を帯びた粒子が堆積(たいせき)しているため、神戸大の兵頭政幸名誉教授らは年代ごとの粒子の向きからS極の位置の推移を分析。約4万2000年前に5回、約3万9000年前に2回のエクスカーションが確認され、2022年に論文発表した。
この研究では各回の移動にかかった年数が18~160年だったこともわかった。それまで、約4万2000年前のエクスカーションは1回で、移動に数千年を要したと考えられていたほか、約3万9000年前の2回については、存在が知られていなかった。
特別展では、論文の内容の解説パネルのほか、7回それぞれのS極の移動経路と現在の位置を示した8個の地球儀が並ぶ。オーロラは地磁気極の周辺に発生するため、地球儀上のS極の動きをたどることで、オーロラが観測できた範囲もわかるようにした。
さらに、同時代にいたナウマンゾウやネアンデルタール人の骨のレプリカなども展示している。同館の北川淳子学芸員は「日本でもナウマンゾウなどがオーロラを見ていたかもしれない。そんな想像を巡らせ、ロマンを感じてもらえれば」と話す。