中国ビジネスは「引く」べきか「出る」べきか――現地日系企業が吐露した「驚くべきホンネ」
水面下で悲観広がる中国ビジネス
日中の経済関係は、当然ながら中国経済や米中関係、日中関係の状況などによって変化する。しかしながら現時点において、多くの日本企業が、中国ビジネスを悲観的に捉えているように映る。少なくとも、私が北京駐在員をしていた時代(2009~2012年の胡錦濤政権末期)とは、隔世の感がある。 そのあたりを、もう少し具体的に見ていこう。中国国内に拠点を構える日系企業を束ねている、中国日本商会(本部・北京)という団体がある。1991年に設立された外国人商工会議所の第1号で、私も北京駐在員時代には所属していた。 その中国日本商会は8月30日、「会員企業景況・事業環境認識アンケート結果 第4回」を公表した。中国日本商会によれば、現在、中国の日系企業は3万1300社。そのうち1760社が、アンケートに回答した結果だ。同様の調査結果発表は、昨年9月、今年1月、5月に次いで4回目となる。 その主なものは、次の通りだ。質問番号は、私が便宜上付けたものである。 1)あなたの会社の第2四半期(4~6月)の第1四半期(1~3月)と比較した売り上げは? 5%以上上昇した:14%、0~5%上昇した:18%、変化なし:24%、0~5%減少した:20%、5%以上減少した:24% 2)あなたの会社の第2四半期の第1四半期と比較した営業利益は? 5%以上上昇した:14%、0~5%上昇した:16%、変化なし:25%、0~5%減少した:20%、5%以上減少した:24% 3)あなたの会社の第2四半期の第1四半期と比較した販売価格は? 5%以上上昇し:4%、0~5%上昇した:9%、変化なし:46%、0~5%減少した:27%、5%以上減少した:13% 4)あなたの会社の第2四半期の第1四半期と比較した景況感は? 改善された:5%、やや改善された:17%、横ばい:36%、やや悪化した:24%、悪化した 18% 5)中国国内の第2四半期の第1四半期と比較した景況感は? 改善された:1%、やや改善された:10%、横ばい:39%、やや悪化した:34%、悪化した 16% 6)2024年は昨年に比べて中国への投資を増加させるか? 大幅に増加させる:1%、増加させる13%、前年同額:40%、減少させる:21%、投資しない:24% 7)中国国内の2024年の2023年と比較した景況感をどう予測するか? 改善するだろう:1%、やや改善するだろう:10%、横ばいだろう:29%、やや悪化するだろう:38%、悪化するだろう:22% 8)2024年以降の中国市場をどう考えるか? 最重要市場:25%、3大重要市場の一つ:27%、多くの重要市場の一つ:37%、重要市場ではない:5% 9)国の事業展開地での事業環境の満足度は? 非常に満足している:3%、満足している:55%、不満である:37%、大いに不満である:5% 以上である。まず1の売り上げと、2の利益、それに4の会社の景況感だが、それぞれ「上昇した32%対減少した44%」「上昇した30%対減少した44%」「改善22%対悪化42%」。つまり全体として見ると、日系企業は中国ビジネスでうまくいっていないことが分かる。 次に3の販売価格は、「上昇した13%対減少した40%」。これは中国でデフレが進行していることを示している。 続いて、5と7の中国国内の現在と近未来の景況感だが、それぞれ「改善11%対悪化50%」「改善11%対悪化67%」。すなわち、中国経済の悪化は続いており、今後も続くと見ている。 6の今後の投資予定に関しては、「増加14%対減少、なし45%」。新規投資に関しては消極的である。 さらに、中国市場の位置づけについては、「多くの重要市場の一つ37%」という認識が最大値。中国の事業環境については、「満足58%対不満42%」で、ようやく満足が不満を上回った。 全体として見ると、重ねて言うが、私が北京駐在員をしていた胡錦濤時代の末期とは、「別世界」である。私の頃は、圧倒的多数の日系企業が売り上げや利益を伸ばしていて、中国を「世界一重要な市場」と捉えていた。 さらに付け加えると、私の経験から言って、中国国内の最前線で日々、ビジネスに従事している日系企業は、こうしたアンケート調査に関して、実際に感じているよりも、中国に甘く回答する傾向がある。日系企業は社内に多くの中国人従業員を抱えていて、普段中国の法律法規に基づいて、中国企業と取引している。そのため、どうしても中国に対する「情」や「忖度(そんたく)」が入ってしまうのだ。 そうしたことを勘案すると、実際にはこの調査結果以上の悲観的な状況が広がっていると見るべきだろう。