ソフトバンク、高性能AI駆使した「次世代型産業団地」整備へ…堺市のシャープ旧液晶工場活用が試金石に
ソフトバンクは2026年にも堺市のシャープ工場を活用し、高性能な人工知能(AI)を駆使した次世代型産業団地の整備に乗り出す。AI向けデータセンターに隣接した立地を生かし、幅広い産業でAIを活用した新製品・サービスの開発を促し、地方の産業育成につなげる。(小野卓哉)
データセンター
宮川潤一社長が読売新聞の取材に「AIの頭脳付きの産業団地をつくる。あらゆる産業をAIで活性化させたい」と述べた。データセンターを使った「産業活性化構想」と位置付け、大企業だけでなく中小やスタートアップ(新興企業)にも利用を呼びかける考えだ。
ソフトバンクは24年12月、堺市にあるシャープの液晶パネル工場や周辺設備を1000億円で取得することを決めた。延べ床面積約60万平方メートルの旧液晶工場のうち、2割程度をAI用データセンターにする計画で、残りの敷地に外部の企業を誘致する。
データセンターの演算処理装置には、米半導体大手エヌビディアから、AIのデータ処理を担う最新鋭の画像処理半導体(GPU)を調達して使う計画だ。これを産業団地の入居企業が利用できるようにする。外部の通信回線を介さずにデータを扱うため、独自技術や知的財産の流出リスクを抑えられるという。
無人工場も
誘致する企業には、製造業や製薬関連の研究開発部門などを見込んでいる。24年のノーベル化学賞は、たんぱく質の構造をAIで予測する技術を開発した米英の研究者3人が受賞した。AIを使えば、新薬や新素材の開発時間が劇的に短縮すると期待されている。
このほか労働力人口の減少をにらみ、AIが自律的に管理する生産拠点の構築も視野に入れる。AIが需要に応じて生産ラインを設計する無人工場や、AIが生育を管理する野菜や陸上養殖の拠点などを想定している。農業や漁業といった1次産業の革新を後押しする。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の推計では、経済成長率がゼロに近い水準で推移した場合、40年の労働力人口は6002万人と22年から900万人も減少する。宮川氏は「危機的な話だ。まず地方で減り、産業が傷む」と指摘した上で、「補うにはAIという道具を使うしかない。それが地域経済を疲弊させないためのカギだ」と強調した。