「大学受験なんて無意味。息子にはスキップさせて」附属出身の夫の言葉が、元ガリ勉妻にショックを与えた理由
作家・ライターとして「現代のカップルが抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。人間関係が複雑化する現代において、男女間の問題もまた、入り組んでいるようです。 今回お話を伺うのは、3人兄弟を育てながら会社員として忙しく働く美玖さん(43)。夫・陵さん(45)とは結婚して15年です。 今年長男の中学受験を終えたとのことで「それでは一息つけますね」と言うと「この受験に関して、夫婦間で価値観のすり合わせに紆余曲折ありまして……まだ今までどおりとは言えません」とのこと。 詳しく伺ってみましょう。 取材者プロフィール 美玖さん(仮名):43歳、3人兄弟の母。会社員。東京出身。 陵さん(仮名):45歳、会社員。東京出身。
頑張ったら東大に行けるという勘違い
「私は学生時代、順調に進んでしまったタイプでした。どのくらい平和だったかというと、結婚して息子が3人生まれてしばらく、全員すごく頑張れば東大に入れるだろうと思っていたほど能天気でした」 直球で語り始めてくれた美玖さん。小柄で、均整の取れたスタイル、少しハスキーな声が心地いい方です。黒い素直な髪をひとつにまとめ、薄いメイクでメガネをかけた彼女。穏やかな口調で、パンチのきいたことをおっしゃいました。 3番目の息子さんが小学校から帰ってくるまでに、都心のカフェでお話を伺うことにします。 「私はとても運が良かったと思います。町の書店の娘に生まれて、本だけはたくさん読める環境でした。特にお金持ちじゃないですけど、忙しい両親は適当に私を放って、でもまっとうな愛情をかけてくれました。 近所でそろばんを習っていたら中学受験を勧められ、小5で大手塾に通い始めました。進学先の環境に合わせて一生懸命頑張っていたら、東大に合格したんです。 CMじゃないですけど、『なんで私が東大に!?』っていう気分でした。振り返ってみると、ひたすら環境のおかげなんです。受験して入った女子校は中高一貫の進学校で、高校生で猛烈に勉強しました。 友達がいなかったら、あんなに頑張れなかったと思います。さながら団体戦の様相でした。私の地頭は東大に行くほど良くないんです。自分でよくわかっています。本をたくさん読んで雑学とガリ勉できる環境があったこと、意識が高い仲間や先生に恵まれたことがラッキーでした。上げ底、っていうか……あの中高に行ってなかったら、私は東大には行けていません」 美玖さんは冷静に語りはじめました。どうやら夫婦の問題に「学校」が深く関わっているようです。
佐野 倫子