やはり政治が悪い、古い人は自ら退くべきーー忖度しない経済作家、高杉良が語る日本
もう小説は書けないかもしれないけれど
もう、今後は、小説は書けないかもしれない。そう思いながらも創作への意欲を捨てきれない、と高杉は微笑む。 「目も見えなくなって、書く気になれない。頭もシャッキリしなくなってきてるから。でも、活字社会からは離れたくないという気持ちが、いつもあるんです。少し、構想している物語はあるんだ。書けたらいいなと思ってはいるんだけどね」 書き残したことがあるか、と問うと、首を横に振った。 「それはないかな。書きたいものは、書きたい時に、いつでも書いてきた。それよりも、この分野(経済小説)を支えてくれる書き手がもっといてくれたらいいのにな、とは思うんです。男性でも女性でも。僕の頃みたいに、役所でもズカズカ入っていくみたいなこともできないし(笑)、取材は難しいのかもしれないけど、『今の時代、これでいいはずがない』という視点を持つ作家の登場を待っているんです。もちろん、そうした小説の題材になるほどの企業人も、たくさん出てきてほしい」 --- 高杉良(たかすぎ・りょう) 1939(昭和14)年東京生まれ。石油化学専門紙記者のかたわら、1975年『虚構の城』で作家デビュー。綿密な取材に立脚した経済小説の第一人者として活躍。著書に『人事異動』、『金融腐蝕列島』、『小説日本興業銀行』、『炎の経営者』、『出世と左遷』、『小説ヤマト運輸』、『組織に埋れず』、『不撓不屈』、『めぐみ園の夏』、『リベンジ 巨大外資銀行』、『雨にも負けず』ほか多数。今年4月、自らの仕事人生を描いた『破天荒』(新潮社)を発表した。