日銀・黒田総裁会見1月23日(全文1)強力な金融緩和を粘り強く続ける必要
予想物価上昇率が上昇の場合、名目の金利を調整は起こりうるのか
日本経済新聞:日経新聞の【タカミ 00:13:27】と申します。予想物価上昇率について、今回の展望レポートで判断を弱含みから横ばいに引き上げられましたけれども、予想物価上昇率の引き上げっていうのは、実質金利の低下を通じて金融緩和効果をより強めるという作用があるかと思いますが、これが今横ばいですけれども、さらに進んで予想物価上昇率が上昇していった場合に、強まり過ぎた金融緩和効果を調整するという意味で名目の金利を調整する、そういうことが今後、起きうるのかどうかということについて、お考えをお聞かせください。 黒田:ご指摘のとおり、予想物価上昇率が上昇していきますと、自然利子率が一定であっても、実質金利の低下によって、景気刺激効果が強まっていくということは、そのとおりでありますけれども、あくまでも金融政策につきましては、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという目標との関係で、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を行っておるわけですし、その下で適正なイールドカーブを形成しているわけでおりまして、ご指摘のように予想物価上昇率は上がったから何か直ちにイールドカーブ・コントロールの金利について何か調整する必要があるというふうにはまったく考えていません。
国債買い入れオペを減額で、金融政策の正常化観測が浮上し、円高局面が見られたことについて
ロイター:ロイターの【イトウ 00:15:17】です。金融調節で2点お伺いします。今月9日に国債買い入れオペを減額したことをきっかけに日銀の金融政策の正常化観測が浮上して、為替市場で円高が進む局面が見られました。総裁はオペを受けたこうした市場の反応につきまして、どのように受け止めておられるのかご所見をお願いします。あと関連なのですが、円高が進行したことによって、市場では日銀が今後国債買い入れを減額するのが難しくなったのではないかという見方も聞かれるわけですが、今後イールドカーブが低下した局面で国債買い入れの減額が難しくなるかどうか、円高を踏まえて総裁、どのようにお考えかお願いします。 黒田:込み入ったご質問ですけども、まず、長短金利操作的量的・質的金融緩和というこのフレームワークの下では毎回の金融政策決定会合において、金融市場調節方針が決定されて、これと整合的な形でイールドカーブが形成されるように長期金利の買い入れが実施されるということでありますので、そうした下でのオペの金額やタイミングというものも、国債の需給環境や市場の動向などを踏まえて、実務的に決定されるものでありまして、どのような状況であれ、日々の国債買い入れや買い入れオペの運営が先行きの政策スタンスを示すことはないというふうに言ってよいというふうに思います。 なお、先日そういったことで、国債の需給環境や市場の動向などを踏まえて、実務的に決定されたオペの金額、タイミング等の下で為替相場が円高に進んだ、この一因ではないかと、マーケットの一部で言われているようですけども、まず1つは為替の動きを、全体を見ていただくと分かりますように、ユーロがドルに対して非常に強くなって、ドルがユーロに対して弱くなったわけですけども、その際ドルが他の通貨に対しても若干弱くなったということでありまして、何か特に円高が起こったということでもないように思いますけれども、為替の問題はいろんなファクターで動きますので、それについてとやかく言うつもりはありませんが、為替の動向っていうものももちろん十分よく注視しておりますけれども、オペの金額自体は先ほど申し上げたように、適切なイールドカーブを実現するということを目標に決められておりますので、金額のめどは80兆円となっていますけども、オペの金額はマーケットの状況に応じて増額されたり減額されたりするということでありまして、オペが難しくなるということはないと思っています。 あくまでも適切なイールドカーブを形成するっていう観点から必要なオペを行っているということに尽きまして、オペのその時々の金額とかタイミングが金融政策の先行きを示すものではまったくないということでございます。 ロイター:ありがとうございます。 【連載】日銀・黒田総裁会見(2018年1月23日) 全文2へ続く