世界大会でたくさんの悔し涙。だからこそ清水梨紗は今夏に懸けている。メダルへ――鍵を握るダイナミックな上下動【パリ五輪の選ばれし18人】
長距離を走っても正確なアーリークロスを連発
パリ五輪に挑むなでしこジャパンのメンバーがついに決まった。ここでは12年ぶりのメダル獲得を目ざす日本女子代表の選ばれし18人を紹介。今回はDF清水梨紗だ。 【PHOTO】7月25日にパリ五輪初戦を迎えるなでしこジャパン18人とバックアップメンバー4人を一挙紹介! ――◆――◆―― 日本でも有数の持久力の持ち主で、タッチライン際を何度も上下動できる運動量が特長の清水梨紗は、なでしこジャパン不動の右サイドバックだ。直近1年間の代表戦では3得点を決めており、DF登録選手としては得点力も身につけてきた。 4バックの時は右のサイドバック、5バックの時には右のウイングバックとして活躍する清水のダイナミックな働きは、パリ五輪でも鍵を握りそうだ。 日テレ・ベレーザ(現・日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の育成組織である日テレ・メニーナ時代、清水は当初、攻撃的なポジションを任されていたが、徐々に右サイドバックが主戦場となる。それからは当時、なでしこジャパンの主力を担った、近賀ゆかり(現・サンフレッチェ広島レジーナ)と有吉佐織(昨季は大宮アルディージャVENTUS)のふたりを手本にして育ってきたと言う。 「ベレーザのボールパーソンをする時は、サイドバックの近くに座ってずっとプレーを見ていた」と、ベレーザでも不動のサイドバックだった最高の教材を間近で見つめ、数年後にはそのポジションが清水の定位置となった。 そして2015年シーズンからのなでしこリーグ5連覇に貢献し、ベレーザの黄金期を築いて、終盤にはキャプテンも任されるほど中心選手となっていった。 だが、清水は世界大会では悔し涙をたくさん流してきた。 2012年のU-17女子ワールドカップは、準々決勝でU-17ガーナ女子代表に0-1で敗れてベスト8に留まり、15年のU-19アジア女子選手権では主力としてアジア制覇を達成したものの、翌年のU-20女子W杯を怪我で欠場し、出場すら叶わなかった。 18年2月になでしこジャパンデビューを果たすと、そこから一気に右サイドバックの主力を勝ち取ったものの、19年の女子W杯、21年の東京五輪、23年の女子W杯も頂点からはほど遠かった。 現在のなでしこジャパンの選手は、どこかの年代の世界大会で優勝し、世界一を経験した選手が多いものの、清水は世界大会で敗退ばかりを経験してきた。「自分は悔しい思いしかしていない」と話す清水は、だからこそパリ五輪に懸けている。 東京NBからウェストハム・ユナイテッド(イングランド)に移籍した清水は、ヨーロッパ特有の攻守の切り替えが激しいプレースタイルに素早く馴染み、ストロングポイントである走力を活かしながら、長距離を走っても正確なアーリークロスを連発してチームに貢献し続けている。 一見すると華奢な身体のようだが、ベレーザ時代からウェストハムでの2年間を含め、どんなチームのどんな監督のもとでも主力を担い続けてきたことが、彼女のフットボーラーとしての価値を証明している。 悲願の世界大会優勝へ。そのチャンスが今夏に待っている。 取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)