なぜ優秀だった人物が突然「仕事のできない人」に変貌するのか…じつは「シンプルな理由」があった
わたしたちはいつまで金銭や時間など限りある「価値」を奪い合うのか。ベストセラー『世界は経営でできている』では、気鋭の経営学者が人生にころがる「経営の失敗」をユーモラスに語ります。 【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の大きな違い ※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。 〈いつだってある日突然に「○○(不思議なことに大抵はカタカナ語かアルファベットを用いた略語)対応」が会社や社会で(会社を反対にすると社会なので似たようなものだ)一大イベントとなる。 書店には「○○対応必携」「○○実務ハンドブック」などが並びお祭り騒ぎ。経理/法務/総務/人事といった普段は控えめな部署も水を得た魚、カタカナ語を得たコンサル、とばかりに八面六臂の大活躍。そして「××社流、戦略○○」というお題目が決まり役員一同ウットリ惚れ惚れというわけだ。 そこからはもう無駄な書類のオンパレードだ。 従業員にも、出入り業者にも、お得意先にも○○対応のために無駄な時間を使わせる。そうして従業員の不満と出入り業者の不興とお得意先の怒りを買う。会社は何かを売って成立するはずだが、こう「買って」ばかりだとあっという間に傾く。本当の仕事をしていないのだから当たり前である。〉(『世界は経営でできている』より) 『世界は経営でできている』では、そんな仕事あるあるが描かれている。 本来「顧客を生み出し顧客を満足に/幸せにして、その対価として顧客が喜んで報酬を支払ってくれるようにする」べきである仕事がなぜ、ときに無意味な作業を生んでしまうのだろうか。 さらに、かつては優秀と言われた人物が出世して、なぜ仕事ができない人に変貌してしまうことがあるのか。
人は無能になる職階にまで出世する
じつは「特定の職階では優秀だったが次の職階では優秀でない人」が多数いるという実感を裏付ける法則が存在する。 〈なぜここまで会社には真の意味での仕事/価値を創り出す「経営」をおこなっている上司がいないのだろうか。その一つの理由は、次に示すような「人は無能になる職階にまで出世する」という数理的に証明できる法則があるためである。 条件1:組織はピラミッド状であり複数の階層(職階)が存在すると仮定する。 条件2:ある職階において最も成績が良かったものがより上位の職階に就く(成績が悪い場合にも降格・解雇はされない)と仮定する。 条件3:複数の職階において求められる能力はそれぞれ異なると仮定する。 条件4:個々人が持つ能力値はランダムに割り振られ、異なる能力間に相関関係はないと仮定する。 これらは特に現代の官僚制組織ではありそうな状況だろう。〉(『世界は経営でできている』より) この状況をどう脱すればいいのか、打開策はあるのか。 『世界は経営でできている』では、回避する手についても解説している。 無意味な仕事が生まれ続けてしまう不幸を、ぜひ変えていただきたい。 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部