”打倒大迫”を果たせなかったびわ湖マラソンの日本人トップが「パリ五輪狙う」一般参加の作田直也だったという衝撃
マラソンの東京五輪代表を決める最終選考レース、MGCファイナルチャレンジを兼ねたびわ湖毎日マラソンが8日、滋賀県大津市で行われ、一般参加だった作田直也(25、JR東日本)が日本人トップ(全体4位)の2時間8分59秒でゴールした。大迫傑(28、ナイキ)が東京マラソンで更新した2時間5分29秒の日本記録に届かず最後の1枠は大迫で確定したが、これが3度目のマラソンの作田は「パリ五輪でメダルを狙う」と目標を掲げた。雨と気温9度という最悪コンディションに加え、大会のペース設定も日本記録に届かぬもので、びわ湖から”打倒大迫”を果たすランナーが出てくる可能性は低かったが、4年後のパリ五輪が楽しみになる期待の若手が飛び出し、意義のある大会になった。なお優勝したのは、エバンス・チェベト(31、ケニア)で記録は2時間7分29秒だった。
一般参加の3度目マラソンで快挙
「まだ80秒ある」 日本人トップ(全体4位)で雨の皇子山陸上競技場に戻ってきたのは一般参加のゼッケン「102」を付けた作田だった。 25歳の”伏兵”がゴール付近に設置されたタイマーを確認したとき2時間7分40秒を示していた。残り400メートルで80秒。2時間8分台を出すには余裕はあった。 「8分台いけそうだなあと思った瞬間に足が空回りしたんです。9分台と8分台では違います。欲が出ましたね」 力んだ。スピードが出なくなった。バランスを崩しながら2時間8分59秒で用意されたゴールテープを切った。 「結局、79秒。危ないところでした。でも、2時間10分切りと、日本人1位のどちらかを狙っていたので、その通りの結果になって満足しています」 ゴールの瞬間、あまり表情を変えることのなかった作田だが、インタビューになると爽やかな笑顔を浮かべた。 スタートで号砲が鳴らないアクシデント。 だが、作田は悠然と構えていた。 「こんなこともあるのかなと。マイペースとよく言われているんですが、ある意味、こういうことは、ないこと。余裕があったほうがマラソン走り始めてもワクワクして走れるのかなと、プラス思考の大切さはチームでよく言われています」 最初から最後まで雨が止まずスタート時の気温は9度の最悪コンディション。だが、これもまた「コーチからも事前に雨はコントロールできないことなので、どう思ってもしょうがない、と言われていました。気にすることなく走り始めて最後までいった」という。 究極のプラス思考がレースに生きる。 先頭集団で30キロまで我慢を続けた。1キロ3分フラットで設定されていたペースメーカーは、号砲が鳴らなかった影響からか、2キロまではペースを守れず、その後、ペースアップしたが、びわ湖コース特有の強風の影響もありペースは激しく上下した。 10キロで103回目のマラソンとなる川内優輝(33、あいおいニッセイ同和損保)が集団から離れ、2時間8分台の持ちタイムがあった野口拓也(31、コニカミノルタ)も遅れた。23キロ過ぎには、MGC4位で東京五輪の補欠候補となり、優勝候補だった大塚祥平(25、九電工)も、「これまでで一番苦しくなった」と脱落したが、一般参加の作田は食らいついていった。 30キロでペースメーカーが外れると、チェベト、フィレックス・キプロティチ(31、ケニア)の2時間5分台の自己ベストのある2人に、スティーブン・モコカ(35、南アフリカ)が仕掛けた。この展開も作田は読んでいた。 「飛び出しを見ていないんです。一気にいかれました。例年、30キロ以降で外国人選手がペースを作っているのでペースの変化があると思っていたんです。結果、それと同じ形になっていった。僕の力は、そこまでないので、ここでつくと体力を消耗するので(追うのは)やめておこうと。追わない方がいいと判断しました」 冷静に頭を働かせ、あえて追わなかった。