【「夕刊フジ」休刊で岐路に立つ夕刊紙】 「日刊ゲンダイ」寺田俊治社長インタビュー「 “大新聞が書かない本当のこと”を書く。これが原点です」
サブスク会員は増加
そもそも夕刊フジが休刊に追い込まれた最大の原因は、世がネット時代、スマホ社会になり、紙のニーズが大きく下がったことにある。そのために売り上げを落としたのは、一般紙や雑誌も同様だ。そうした中、日刊ゲンダイの発行部数はどう推移しているのか。 「(部数は)もちろん減っています。減っていますが、一時に比べれば、このところは何とか踏み止まっているかな」 一方でネット事業にも力を入れている。東スポの「東スポWEB」と同様にWEB版「日刊ゲンダイDIGITAL」、「日刊ゲンダイ競馬」を運営し、紙には掲載されていないネットオリジナル記事を配信。無料、有料(スタンダード、プレミアムの2種類)の会員も募集している。将来、WEB版が紙を凌駕する事態はあり得るのか。 「いや、売り上げはまだ紙のほうが圧倒しています。利益率だけで見ると、もちろんDIGITALのほうがいい。紙代も印刷代もかからないんだから。でも、売り上げはまだまだ紙のほうが上ですね」 その半面、少しずつではあるが、サブスクに紙の読者を取り込み、会員を増やすことに手応えを感じているという。 「大手新聞には全く及びませんが、ウチにも東京、大阪、名古屋、北海道と、各販売エリアに宅配の読者がいるんです。大体、一地域に1000人ぐらい。そういう人たちをみんなDIGITALに取り込めているわけではないけれど、その読者層と重なるサブスクの会員が徐々に増えているところです」
均質化されて見えるネット記事
ただし、記事が大手ポータルサイトに転載されると、様々な規制によって使用できる言葉が制限され、アップされるスタイルも同一化される。過激で筆法鋭い日刊ゲンダイの記事も、それほどでもない一般紙、スポーツ紙の記事も、ヤフトピに同じ大きさと同じ形式で並べられると、どれもこれも均質化されて見えてしまうのだ。これは寺田社長にとっても一つの懸案だという。 「ネットの記事の見せ方にはある程度、一定のパターンがある。そこにウチ独特の言葉や論調がパッと出てくると、世の中からちょっと浮いているように受け取られることもある。だから、そういう可能性が高いものは出していないし、1面の特集記事も無料では提供していません。ただ、今後はそういう記事をサブスクで出していくと、逆に独自の商品性が生まれるかもしれない。最近ではそう考えています」