Media Briefing[日本版]: 成功するか否かに関係なく、 メディア企業 は「収益源の多様化」に取り組むしかない
それでも広告の存在感は大きい
コマースも軟調ななか、サブスクリプションを銀の弾丸としたい気持ちもあるだろう。実際、比較的成果を挙げているとするリサーチ結果もある。コンテンツへの有料課金という性質上、ニュースパブリッシャーに偏りがちではあるが、New York TimesやGannettなどが成長を続けているのも事実だ。ただしその成長は有料購読者数の拡大を意味するわけではなく、大半が単価向上、つまり購読料の値上げやバンドル版の販売などによって成立している点は無視できない。 なにより、先述のIndependentのように、どれほど多様化しても広告収益を完全に捨て去ったという事例はほぼ存在しない。存在感の大きい広告収入が厳しく、期待していたほど利益を得られそうにないとなると、取れる手段はあまりない。人員削減という名のコストカットくらいだ。アメリカのメディア業界ではリストラの嵐が吹き荒れ、2023年の1月から10月までに1万9000人以上が人員削減の対象となっている。これは2022年同期の3000人を6倍以上上回る数だ。 VICEやVOX Mediaなどのデジタルパブリッシャーだけでなく、Gannettのようなサブスクリプションの世界で成功したとみなされている老舗ニュースパブリッシャーやディズニーも、2022年後半から複数回にわたって従業員を削減してきた。 米DIGIDAYが取材したメディアアナリスト2人と元人事担当幹部は、2024年以降、広告市場の状況に合わせて人員削減を行うことがこれからの「ニューノーマル」になるかもしれないと述べている。これが現実だ。成功の見えない収益源の多様化に取り組みながら、横目で広告市場の状況にも気を配り続ける。あるメディア幹部はこう語っていた。「未来を見通す力が年々衰えているように感じる。(中略)だが、今期もまだ広告を売り続けるつもりだ」。
主な数字
4407万ドル(約66億1050万円):かつて17億ドル(約2550億円)の評価額が付いたBuzzFeedの、11月9日の取引終了時点の時価総額。 7~10%:メディア各社の人員削減比率はおおよそ7~10%。規模によって具体的な人数は異なるが共通するのは編集スタッフが解雇対象である点。 3億5000万ドル(約525億円):破産したVICE Mediaが債権者に売却された際の価格。
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編集部