Media Briefing[日本版]: 成功するか否かに関係なく、 メディア企業 は「収益源の多様化」に取り組むしかない
「終わりよければすべてよし」という言葉をそのまま受け取るなら、メディア企業各社にとって今年は(今年も、と表現すべきかは各社に委ねる)よくなかったということになるのかもしれない。 欧米の主要なメディア企業の2023年第3四半期決算では、大半が広告収入の前年比減少を報告していた。市場に広告費が再び流れ込み始めるという期待感のあった第2四半期からのこの結果は、各社にショックを与えたことだろう。しかも、今のところ第4四半期も期待していたほど利益を得られそうにない。ほとんどのメディア企業にとって、第4四半期は最も好調な四半期となる傾向があることを考えると、これは本当に厳しい状況だ。 メディア各社が「主力事業」とする広告市場はそもそも不安定だ。CPMのプレッシャーやCookie以降のパフォーマンス広告のあり方、低下し続けるトラフィックと、状況が好転しそうな材料は今のところ存在しない。デジタル広告の勢いは削がれていないものの、資金はMeta、Google、Amazonといった大手プラットフォームに傾いており、「中小企業」までは回らない。つまり、お決まりではあるが、「収益源の多様化」というフレーズを掲げるしかない。ただし、多様な収益源のどれかひとつが当たったとして、それが安泰を意味するわけでもない。
多様化を求め、多様化に苦しむ
差し迫った不況や景気後退の影響が色濃かった2022年の夏、当時BuzzFeedのCOOだったクリスチャン・バスラー氏はComplexやHuffPostとの合併によってZ世代とミレニアル世代のオーディエンスを取り込み、プラットフォーム各社が持つスケールメリットに対抗できると自信を見せた。しかし、2年が経ったいま、BuzzFeedはComplexの売却を進めているとされている。CEOのジョナ・ペレッティ氏の言葉を借りるなら、「弱気な景気見通しとプラットフォームの急速な勢力拡大で、マーケティング予算に占めるデジタルパブリッシャーの分け前は縮小していった」ためだ。 そもそもプラットフォーマーのスケールに、メディアのオーディエンスを基盤としたファーストパーティデータだけで対抗するのは厳しい。さらにBuzzFeedの場合、テック、小売、金融といった得意とするカテゴリーでの広告支出控えが起きていたうえに、ブランドがそれらのカテゴリーのオーディエンスを集めることのできる場としてYouTubeやTikTokなどの台頭も著しい。ニュースは既存のメディアとの激しい競争の場であることもマイナスに作用しただろう。 広告依存の収益モデルがいかに脆いか、改めて認識させられる。もちろんBuzzFeedがなにもせずただプログラマティックにだけ傾倒していたわけではないし、収益源に多様化にも取り組もうとしてはいただろう。コマース事業は失速し、ショートフォーム動画コンテンツの収益化という確実性の低い収益源への投資という間違いを犯していたにせよだ。 そう、「収益源の多様化」は成功や成長を約束するものではない。英国のThe Independentは収益の多様化を積極的に推し進め、2023年7月時点で広告収益は全体の半分以下になった。ライセンス事業やシンジケーションビジネスが広告に次ぐ収益源となっており、5%程度ではあるが購読収益もある。ただし、同社の利益は、2021年の710万ドル(約10億円)から2022年の240万ドル(約3億5000万円)に65%減少した。さらに、投資の拡大とコストカットの必要から、同社スタッフの約10%を解雇して達成した「成果」だ。