南海電鉄、なぜ「通天閣」を買収? “大阪のシンボル”再生に向けた都市開発と鉄道事業の未来を読み解く!
南海電鉄の成長戦略と通天閣再編
2025年に開催される大阪万博については、準備の遅れや運営費用の膨張などさまざまな課題が指摘されているものの、大阪では依然として高い期待が寄せられている。 【画像】「なんとぉぉ!」これが40年前の「通天閣」です! 画像で見る(16枚) 日本国際博覧会協会は、来場者数を約2820万人と予測しており、そのうち 「約350万人」(12%) はインバウンド(訪日外国人)と見込んでいる。万博効果を期待して、新たな施設の開業が相次いでいる。 そのなかで、12月4日に南海電鉄が発表したのは、大阪のシンボルである通天閣を運営する通天閣観光の買収だ。万博を軸にした再開発が進むなかで、南海電鉄の買収にはどのような成長戦略があるのだろうか。 通天閣は、大阪のシンボルとして知られる展望塔で、初代は1912(明治45)年に建てられ、日本三大望楼のひとつとしても有名だった。しかし、戦時中に供出され解体された。現在の通天閣は1956(昭和31)年に再建され、登録有形文化財にも指定されている。これまでの運営は、地元の新世界商店街などが出資する通天閣観光が行ってきた。 100周年を迎えた2012(平成24)年以降、観光客増加を狙った改修工事が進められてきた。特に2022年にオープンした、地上22mから滑り降りるタワースライダーは話題となり、多くの観光客を集めている。周辺の商店街も含め、大阪の賑わいを象徴する観光地だ。
鉄道収入限界と再開発戦略の新視点
南海電鉄は、通天閣に近い新今宮駅やなんば駅といった主要ターミナル駅を所有しており、現在進めている「グレーターなんば構想」という再開発計画にも注目が集まっている。 これは、なんば駅周辺の再開発構想だ。なんば駅は1885(明治18)年の創業以来、南海電鉄の拠点となっており、周辺には道頓堀や日本橋、新世界といった繁華街が広がっている。これらの繁華街は距離的には近いものの、これまでそれぞれ独立した商圏として発展してきた。 しかし、この構想では、なんば駅から新今宮や新世界までを一体的に再開発し、回遊性の高い広域エリアを目指している。2023年には高島屋前の駅前が巨大ななんば駅前広場として整備されたが、これも構想の一環だ。 現在公表されているグレーターなんばビジョン「ENTAME-DIVER-CITY ~Meet!Eat!Beat! On NAMBA~(エンタメダイバーシティ ~ミート!イート!ビート!オン ナンバ~)には、次のポイントが示されている。 ・人に勧めたいと思うほどに好感を持ち、普段から度々訪れたり、街の魅力を発信したりする対象である「推しの街」を目指す ・かつてのなんばは、遊びや観光が中心でしたが、近年は働く人や住む人が増えたことを踏まえ、多様なニーズを満たす ・重視する価値観は「独自性」「人情味」「遊び心」 では、なぜ南海電鉄はこのような施策を打ち出しているのか。その背景には、鉄道事業の構造的な課題がある。南海電鉄は2026年4月に鉄道事業を分社化し、新たな子会社に移管する計画だ。本体は不動産や新規成長産業を中心とする事業会社に転換する予定で、この決定の背景には、鉄道収入だけでは経営を維持できないという危機感がある。