南海電鉄、なぜ「通天閣」を買収? “大阪のシンボル”再生に向けた都市開発と鉄道事業の未来を読み解く!
沿線人口減少で揺れるニュータウン
南海電鉄は、他の鉄道会社と同じく沿線人口の減少という問題に直面している。 同社はこれまで沿線開発に力を入れてきた。例えば、自社による ・狭山ニュータウン(大阪狭山市) ・林間田園都市(和歌山県橋本市) の開発に加え、堺市が主導する泉北ニュータウンの開発にも参画している。泉北ニュータウンは南海本線で大阪都心と接続しており、ニュータウン内を走る泉北高速鉄道も南海グループの一員で、2025年には合併予定だ。 これらのニュータウンは深刻な人口減少に直面している。なかでも泉北ニュータウンの状況は象徴的だ。千里ニュータウンと並ぶ府内最大規模の住宅地で、高度な都市計画に基づいて開発された代表的なニュータウンとして知られている。 ところが、堺市の資料によると、人口は1992(平成4)年のピーク時約16.5万人から2020年末には約11.8万人に減少。高齢化も進み、高齢化率は36.2%に達している。さらに、2030年には人口が約9万人、高齢化率が約41%にまで達すると推計され、衰退に歯止めがかからない状況だ。 堺市が進める再開発の取り組みにもかかわらず、鉄道利用者の減少傾向は続いている。さらに深刻なのが林間田園都市だ。南海電鉄が1980(昭和55)年から分譲を開始したこの郊外型住宅地は、南海高野線を使えばなんば駅まで最短で約43分という立地を売りにしていた。こうした 「電車なら都心に近い」 という発想の郊外型住宅開発は、かつての関西で一般的だった。例えば、近鉄沿線の三重県名張市でも同様の開発が行われている。 しかし、都心回帰の潮流のなかで、これら郊外型住宅地の人気は急速に低下している。林間田園都市は計画人口約5万5000人に対し、実際の居住者は1万人程度にとどまる。さらに立地する橋本市自体の人口も約6万1000人で頭打ちとなっている。同様の傾向は南海沿線の岸和田市や貝塚市でも見られ、人口減少が加速している。