きっかけは「桃がもったいない」というシンプルな気持ち。珍しい桃づくしのコースに込められた意味は?
規格外の桃を生かすことはフードロスの削減につながるし、農家の助けになる。しかし、規格外の農産物の取引をめぐる昨今の状況に、シェフは一抹の憂いも感じているという。「フードロスやサステナブルという言葉がなかった時代と違って、最近は規格外の農産物だけを買い叩こうとする人もいます。それをSDGsと言うのはちょっと違うと思うんです」
規格外だからといって買い叩かれては、農家の助けにはならない。だから松本シェフは、普段から付き合いのある農園の規格外の桃を、適正価格で仕入れさせてもらうようにしている。「みんながハッピーな仕組み」を考えて仕入れた桃の料理は、どれも優しいおいしさに満ちている。 ※ランチはショートコース9,350円~、ディナーはコース17,600円~(税込、サービス料別)。
「Chefs for the Blue」のメンバーシェフ
松本シェフが加入している社団法人「Chefs for the Blue」は、水産資源の現状に危機感を抱く料理人とジャーナリストが“サステナブルな漁業のあり方”を考えるグループ。2017年の発足時からここで“獲りすぎない”“海を傷つけない” 方法を学んでいるシェフは、日頃から環境に配慮した漁法で獲れた魚や未利用魚を使用している。
たとえば「桃コース パート2」の前菜の「瞬〆スズキ」は、千葉県船橋市でサステナブルな漁業をおこなう大野和彦さんが獲ったものだ。「瞬〆」は大野さんの得意技で、獲れたばかりのスズキを活け締めした後、エアガンで神経を抜き取って鮮度を維持する技術。「神経締めなので澄んだクリアな味わいが特徴です」という瞬〆スズキは清らかな旨みがあり、きゅうりの清涼感やマスカットの香りとよく合う。シェフは魚のおいしさだけでなく、サステナブルな漁のスタイルにも共感しているそうで、大野さんの活動がどれだけ海にとって良いことなのか話してくれた。
「桃コース パート2」の前菜「瞬〆スズキときゅうりのマリネ レフォールクリームパウダー添え」。アンチョビのクリームの上に、レモン汁と魚醤でマリネした瞬〆スズキ、洋風ガリ(生姜)、茗荷、ホワイトバルサミコ風味のきゅうりのすりおろしとシャインマスカットをのせたもの。カラマンシービネガーでマリネしてスライスしたきゅうりと、バジルのオイルが添えられている。