【鉄道ひとり旅】「サンライズ瀬戸・出雲」憧れの寝台特急で過ごす一夜
鉄道ひとり旅に慣れてきたら、夜行列車の旅をおすすめしたい。夜景から漆黒の闇や星空、そして感動的な夜明けへと移ろう車窓をじっくり眺めるのは、ひとり旅の醍醐味の一つだ。しかし残念ながら現在も定期運行されている夜行列車は、寝台特急「サンライズ瀬戸」(東京―高松駅間)と「サンライズ出雲」(東京―出雲市駅間)のみ。「サンライズエクスプレス」と呼ばれ、赤とベージュのツートンカラーに金色のラインが入った285系電車を使用する。 東京―岡山駅間では両列車は併結して「サンライズ瀬戸・出雲」として運行され、7両+7両=合計14両の堂々たる編成だ。予約が困難なことも多く、人気列車であることは間違いない。 うれしいことに「サンライズエクスプレス」にはプライバシー重視の快適なひとり用個室が充実している。そのバリエーションに富んだ客室には住宅メーカーのミサワホームのノウハウも生かされている。JRの寝台料金はA寝台とB寝台に分かれ、個室のタイプによって料金が決まる。別途、乗車券と特急券も必要になる。 ではひとり旅におすすめの客室を紹介しよう。客室は「シングル」と呼ばれるB寝台個室が最も多く、ダブルデッカー構造(2階建て)の1階室と2階室のほか、平屋タイプもある。「シングルツイン」は車両の端に配置された2段ベッドタイプのB寝台個室。ひとり用の個室だが、補助ベッド料金を払えば2人でも使えるだけの空間がある。「ソロ」は平屋を上下2段に区分けしたB寝台個室。天井が低く窮屈だが寝台料金は最も安い。 そして、ひとり用個室の最高峰がA寝台個室の「シングルデラックス」。ベッド幅はB寝台より広く、室内に洗面台とデスクまで用意されている。旅費を安く抑えるなら、寝台料金がかからない普通車指定席扱いの「ノビノビ座席」を利用しよう。完全に横になれるカーペット敷きのスペースが上下2段に確保されている。 共用設備としてはフリースペースのラウンジとシャワールームを備え、至れり尽くせりの列車だが、飲食については注意が必要だ。食堂車はおろか、売店やワゴンサービスもなく、あるのはソフトドリンクの自動販売機のみ。乗車前に駅弁やお気に入りのお酒などを用意することをお忘れなく! ラウンジで晩酌を楽しみながら、大きな窓から見上げる夜空、明け方のグラデーションを愛でるといった車窓の魅力と時間がゆっくりと流れる夜行列車ならではの心地よさがうれしい。そして、東京駅21時50分発の下り列車では翌朝の岡山駅で「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」の切り離し作業が見学できる。その停車時間を利用して、ホームの売店で朝食用の駅弁を購入することをおすすめしたいが、くれぐれも乗り遅れないように注意しよう。 文・写真/松尾 諭 ■運行日 毎日運転(1日1往復) ■所要時間 約9時間40分(東京―高松)、約12時間10分(東京―出雲市) ■料金(運賃+通常期の特急料金+寝台料金) B寝台個室「シングル」2万2650円(東京―高松)、2万3210円(東京―出雲市) ※「旅行読売」2024年11月号の特集「鉄道ひとり旅」より