カジノ解禁で増加リスク指摘も 「ギャンブル依存症」とは?
日本は身近にギャンブルがありすぎる?
「日本は世界の国々と比較してギャンブル依存症の割合が高いと報じられていますが、その理由の一つはパチンコの普及です。駅前にあり、しかもそれほど大金がかからないとなれば、足が向きやすい。海外では、庶民に身近なギャンブルはあまりないようです。ギャンブルに対する敷居が低ければ、経験者が多くなります。たとえば、テストで『ギャンブルをして負けた次の日に、その分を取り返そうとしましたか?』と聞かれれば、『はい』と答える人の数は必然的に多くなりますよね。つまり、日本人がギャンブル依存症になりやすいとは言い切れず、日本の環境がギャンブル依存症を生み出しやすい状態にあるという面を考えなければなりません」 いま注目されているカジノは、海外ではギャンブル依存症を増加させないように規制の枠を厳しく設定しています。アクセスしづらい場所へ建設し、その存在自体を大々的に宣伝しない、敷居を高くするために高い入場料をとるなど、さまざまな措置を行っています。
ギャンブル依存症から立ち直るには
依存症の悪化は家庭崩壊や犯罪行動など、社会にも大きな影響を及ぼすことがあります一度ギャンブルにのめり込んでしまった場合、そこから抜け出す手段はあるのでしょうか。 「精神科など、医療機関を受診していただくことが第一歩となるでしょう。ただ、ギャンブル依存症に対して、必ず効果があるとされている治療法や薬はありません。ギャンブルに陥ったきっかけは、家族との不仲や会社でのストレスなどということもあります。まずは患者さんの抱える問題を聞き、それに対応していくのが一般的です。その次には認知行動療法なども考えられています。とはいえ、まだまだ手探り状態なのが現状。最初に話したように、どこまでギャンブルに熱中したら病気とするかについても、まだ議論があります。病気として医療の対象としすぎることも問題かもしれません。ただ、ご本人が治したいという意思があれば、病院で医師がお手伝いすることができます。依存症に対する治療はもちろん重要ですが、依存を予防する環境づくりというのももっと考えられていいかもしれません」 国際社会では、ギャンブルに限らず依存症は国力低下につながるとされ、賭場へのアクセスを少しでも減らすという取り組みが主流です。ギャンブル依存症の増加を食い止めるには、カジノ解禁の有無に捉われるのではなく、ギャンブル依存症に対する啓蒙活動と環境対策が必要といえそうです。 (南澤悠佳/ノオト、取材協力/北里大学東病院)