障害者雇用の法定雇用率未達で「社名公表」寸前からの挽回劇 法定雇用率クリアへの3年で見えた成果と課題
障害者から要望を受けて対応に迷った際、上司が人事部へ相談し、人事部で解決策を講じるホットラインも整えた。さらに、採用段階で部署とのマッチングを徹底。募集段階で職種を絞らず、2~3回の面接で応募者の職歴や技能を聞き取り、それにフィットする業務を探す。 該当部署へ配属を打診して了承を取り付け、人事部員が所属長らに障害者との接し方をレクチャー。そのうえで障害者を送り込むため、現場でも受け入れやすい。 「自分の経験を必要としてくれた。評価されるのは純粋にうれしいし、楽しく働けている」。そう語るのは、合同面接会を経て入社した発達障害の50代男性だ。過去のPR企業での勤務歴を買われ、広報部門への配属を会社側から打診された。現在はオウンドメディアのライターとして活躍する。
男性は「長所を伸ばす、という社風が障害者雇用に合っている」と指摘する。障害者の得手不得手は明確。この男性は同時並行で物事を進められず、複数の業務を命じられるとパニックを起こしてしまう。以前の勤務先では、「なぜできないのか」と叱責され、つらい思いをしたという。 人事総務部の兼光皓生主任は「長く働いてもらうためには工夫が必要。選考中から相互理解を深めるのは、就労後に本人の能力を発揮してもらうためだ」と説明する。
アーキ・ジャパンは事業を年々拡大しており、現在は派遣社員1800人、管理部門の社員約150人の規模となった。グループ全体で約30人の障害者を雇用し、そのうち精神関連が約8割を占めるが、この3年間で退職したのは2人のみ。当初の3カ年計画どおり、2024年度中にも法定雇用率を達成できる見込みだ。 ■待遇面での制度設計をどうするか 現在雇用している障害者は契約社員が多い。本人たちのキャリアを考慮し、将来的には正社員へ登用していきたい思いもある。
ただ、「待遇面の制度設計が社内で追いついていない」(吉田社長)。障害特性は個人によって違うため、集中して働ける時間や成果の出し方も異なる。それをどのような軸で評価すれば公正なのか、まだ答えは見えていない。 健常者の社員との融和に課題も残る。アーキ・ジャパンでは、採用時に障害を社内のどこまで共有していいかを確認し、それを尊重している。人によっては、部署の中で一部の上司しか知らない、という事態も生じる。