脂肪肝の原因になる食べ物は脂肪よりも糖だった!肝臓外科医が提案するフォアグラ化しないためにできることは「糖質を減らす」
真っ先に手をつけるのが「糖質」
ですから、「脂肪肝を解消するために食事で何を減らせばいいのか」と迷ったときに、真っ先に手をつけるべきは、やはり糖質なのです。 みなさんも、脂肪肝を治してさまざまな病気のリスクを減らしていくには、脂肪よりも糖質をターゲットにして食事をコントロールすべきだということを、ここでしっかり頭にインプットしておいてください。 「脂肪肝は糖質の過剰摂取によって形成される」ということを示すもっとも分かりやすい例は「フォアグラ」です。みなさんご存じのように、フランスの伝統的料理で、キャビア、トリュフと並ぶ世界3大珍味のひとつですね。 フォアグラは、人為的に脂肪肝にしたガチョウの肝臓です。どうやってつくられているのかというと、ガチョウを飼育小屋に入れて、やわらかく蒸して消化をよくしたトウモロコシのエサを1日3回、専用の漏斗で強制的にガチョウの胃に流し込むのです。 エサは1回250gから始めて徐々に増やして500gにするのですが、そうするとガチョウの肝臓はわずか1か月で2kgに達するのだといいます。これで、脂肪でパンパンにふくらんだ肝臓=フォアグラの出来上がりです。 みなさんお気づきと思いますが、ここで重要なのは、ガチョウがトウモロコシだけをエサにしている点です。トウモロコシの粒はほとんど糖質で占められています。すなわち、ガチョウは糖質の大量投与で脂肪肝にさせられたのです。 トウモロコシのでんぷんは、小腸でブドウ糖に分解されて血液中に入り、そのブドウ糖はインスリンの働きによって全身の細胞に取り込まれ、筋肉や各臓器のエネルギーとして使われます。 また、余分なブドウ糖はグリコーゲンに変換されて、エネルギー不足になったときのための備えとして筋肉や肝臓にストックされます。もっとも、筋肉や肝臓のグリコーゲンはあくまで「その場しのぎ用」であり、それほど大量にはためられません。
フォアグラと同じことが起きている
また、ガチョウの場合、ケージに入れられたままろくに筋肉も動かさず、ほとんどエネルギーを消費しないような環境で飼われています。 エネルギー消費が少ないということは、細胞でブドウ糖がろくに使われないということ。当然、血液中にブドウ糖が余ってしまいますし、余分なエネルギーをグリコーゲンにして入れておく「筋肉や肝臓の一時保管場所」もすぐに満杯になってしまいます。 するとどうなるかというと、体内に余りに余ったブドウ糖エネルギーが肝臓に居場所を求め、そこで中性脂肪に変換されてどんどん蓄積することになる。結果、日々脂肪がたまって肝臓がはちきれんばかりに肥大していくというわけです。 つまり、わたしたち人間にもガチョウと同じことが起こっているようなものです。 とりわけ、日々の糖質摂取量がかなり多いにもかかわらず、日々ろくに体を動かさず消費エネルギーが少ない人は、「自分の肝臓もいずれフォアグラ状態になる」というくらいの危機感を抱いたほうがいいかもしれません。 そして、ごはん、パン、麺類、スナック菓子などさまざまな糖質があるなかでも、いちばん警戒をするべきなのが甘い飲み物です。もし、人間の肝臓を最短でフォアグラ化させるなら、いちばん確実で効率的な方法は、間違いなく甘い飲み物を毎日ガブ飲みすることでしょう。 だから、炭酸飲料、果物・野菜ジュース、スポーツドリンクなどの甘い飲み物を日々ガブ飲みしている人は、無自覚なまま「肝臓フォアグラ化」へと一直線に突き進んでいるということになりますね。 尾形哲 長野県・佐久市立国保浅間総合病院 外科部長(肝胆膵)・救急医療部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。最新刊『甘い飲み物が肝臓を殺す』のほか『肝臓こそすべて』『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』など著書多数。SNSでも肝臓から脂肪を落とす術を積極的に発信し、大きな反響を呼んでいる。
尾形哲