「抜けたらうちのプレーが変わる」 指揮官も絶賛、17大会ぶり皇后杯Vの富士通で躍動する生え抜き9年目の苦労人 内尾聡菜が大会ベスト5選出に感涙
15日に閉幕したバスケットボール女子の皇后杯全日本選手権決勝で、富士通がアイシンを65-55で破り、2007年度大会以来、17大会ぶりの頂点に立った。大きな原動力となったのは、大会ベスト5に選ばれて、思わず涙を流した生え抜きの苦労人、内尾聡菜(27)=北九州市出身=だった。 ■〝リアル〟広瀬すずに困惑!?「どえらい可愛かった」【写真】 決勝後のセレモニー。ベスト5で名前がコールされると、富士通ベンチの盛り上がりは最高潮に達した。福岡大若葉高から入団して9年目。苦しみながら懸命に努力を積み重ねた姿を、誰もが知っているからだった。 内尾は驚いた表情を見せると、すぐに両手で顔を覆った。記者会見では「昨季まではベンチから選ばれた選手を見送ると言いますか、見ている、聞いている側でした。この大会もまさか自分の名前が呼ばれるとは思っていなかった」と率直な感情を明かした。 ここまで話すと、再び感情があふれ出した。「本当にすいません…。(チームの目標はリーグ連覇との2冠なので)通過点。個人的な気持ちなんですけど、本当にここまで苦しくて…。苦しかったので、素直にうれしかった。今までのこともいろいろと思い出してしまい、感極まってしまいました」 献身的な守備が持ち味で、今夏のパリ五輪日本代表候補にも選出されていた実力者はかねて攻撃面が課題でもあった。控えめな性格で、以前はシュートチャンスでも「自分が打っていいのか」と躊躇することもあったという。 それでも東京五輪で銀メダルメンバーとなった宮澤夕貴、町田瑠唯、林咲希(福岡県糸島市出身)らの存在も手本としながら、努力を重ねて本格開花のシーズンを過ごしている。 トヨタ紡績との準々決勝でチーム最多の18得点を挙げ、昨年覇者のデンソーとの準決勝でもチーム2位の10得点を記録した。アイシンとの決勝では57―53の第4クオーター(Q)残り2分7秒で勝利を大きく引き寄せる3点シュートを決めるなど10得点、12リバウンドで優勝に貢献した。 堅い守備も今大会を制した要因の一つで、鉄壁を誇る内尾が中心となり足を動かし続けた。町田は「ずっと富士通を支えてくれている選手。私もいつか選ばれてほしい選手だった。ずっと影のMVPだと思っている。自分のことよりもうれしい」と満面の笑みで後輩の成長を喜んだ。 テーブス監督も「少しずつオールラウンダーになってきた。内尾が抜けたらうちのプレーがずいぶん変わる。他の選手のために(プレーの)スペースをつくったりできる選手。だから期待することはけがしないことですかね」と絶大な信頼を口にした。 昨季はWリーグを制したチームが今シーズン見据えるのは、首位を快走するリーグ連覇と合わせた「2冠」だ。これまでも定評ある守備で貢献してきたが、要所で得点を決めるなど攻撃面でも大きく進化する27歳のフォワードがチームを引っ張る。
西日本新聞社