ファジアーノ岡山を昇格PO決勝へ導いたJ1で出番を無くした男達
12月には33歳になる赤嶺はガンバ大阪へ完全移籍した昨シーズン、プロ10年目で初めて無得点に終わった。FC東京とベガルタ仙台で通算68ゴールをあげているストライカーは再起を求めて、岡山で自身にとって初めてとなるJ2での戦いに挑んだ。 リーグ戦では、出場停止だった1戦を除いて全41試合に先発。フィールドプレーヤーでは最長の3630分間プレーしたが、ゴールはわずか4。7月31日のギラヴァンツ北九州戦を最後に不発が続いていたエースの弾ける笑顔を、キャプテンのDF岩政大樹は万感の思いを込めて見つめていた。 「(赤嶺)真吾はなかなか点を取れなかったけど、そのなかでもけがをすることなく、1年間、体を張り続けた。こういう試合では頑張ってきたけど、なかなか結果を出せなかった選手が輝くもの。真吾が抜け出した時点で、ゴールを決めると思った」 こう語る34歳の岩政も、10年間在籍した鹿島を2013シーズンのオフに退団。タイのテロ・サーサナFCを経て岡山へ完全移籍で加わり、出場停止の2戦を除く82試合に先発してきた2年間をこう位置づける。 「ここは非常にいいクラブですけど、勝たなければいけない、というところに対しての執着や覚悟がまだ足り なかった。それを植えつけるために呼ばれた、と僕は思っているので」 さまざまな夢を追い求め、岡山で集った男たちは、レギュラーシーズンで勝ち点19もの差をつけられた松本を土壇場でうっちゃっての勝利にも努めて冷静だった。 「真吾さんの姿は見えていましたけど、あそこでトヨが真吾さんを使うまでの過程は自分にはなかった。そこまで見えるようになったら、もっと上の選手になれるのかな」 矢島が決勝点の場面をあらためて振り返れば、豊川は「決勝こそは自分が点を取って、ヒーローになります」と静かな口調のなかに闘志を込めた。そして、前半23分のFW押谷祐樹の先制弾もアシストしている赤嶺は、約4ヶ月ぶりにつかんだゴールの感触を最後の戦いへつなげる。 「ベンチの選手やスタッフ、サポーターの一体感を背負ったゴールでした」 決勝は12月4日。リーグ戦で1分け1敗に終わったセレッソ大阪のホームに乗り込むが、相性の悪さや不利な条件をはね返すだけの勢いと自信が、いまの岡山にはみなぎっている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)