買収か寄付か、浮上した公選法違反疑惑 斎藤知事は弁明「PR会社社長はボランティア」
問題となったPR会社の代表は今回、SNSで「広報全般を任せていただいた」などと発信。選挙カーに上って斎藤元彦氏が演説する様子を自ら撮影し、動画配信していたことも明らかになっている。
三浦氏によると、①特定の選挙で②特定の候補者について③投票行動を依頼する-の3条件がそろうと選挙運動とみなされるため、選挙プランナーは通常、そうならないよう注意を払う。また、今回のケースでは「(代表)本人に悪気はなかったと思うが、クライアントとの守秘義務が守られていない点でも問題がある」と指摘した。
今回と似た状況で公職選挙法違反が指摘されたケースとして、令和4年2月の長崎県知事選がある。違法な報酬約400万円を支払うなどした疑いがあるとして、大石賢吾知事と陣営の出納責任者、選挙コンサルティング会社社長が同罪で告発されたが、長崎地検は今年10月、いずれも嫌疑不十分で不起訴とした。
このとき立件が見送られた理由について、元東京地検特捜部検事の弁護士、郷原信郎氏は「誰の意思で報酬が払われたかはっきりせず、買収者と被買収者の関係が明らかにならなかった」と説明する。
郷原氏は今回、斎藤氏が直接PR会社の事務所を訪れて依頼し、同社が業務として広報全般を請け負ったと自ら明かしたことに注目。インターネット上では代表が斎藤氏の演説を配信用に撮影している動画も確認され、郷原氏は「明らかな選挙運動で、斎藤氏が自ら依頼したのであれば言い逃れできない」とみる。
また公選法は、自治体と利益を伴う契約を結ぶ当事者が、その自治体の首長選や議員選で寄付をしてはならないと定めている。PR会社の代表は兵庫県の有識者会議の委員を務めている。郷原氏は「県の事業を有償で請け負っていれば、ボランティアで今回の行為を行ったとしても、その費用相当分が寄付に当たる。立証も容易だろう」と指摘した。
■兵庫県議会は静観「捜査機関の結論待つ」
斎藤元彦知事を巡ってはパワハラなど複数の疑惑が文書で告発され、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で調査が進んでいるが、今回の知事選での公選法違反疑惑は審議の対象外。県議会関係者からは「捜査機関が動くべき事案」として百条委での審議には慎重な意見が目立つ。