一田憲子 なぜ怖がりの私が手術を前に「ま、いいか」と開き直れたのか。人生の選択肢を広げるために「怖がり気質」を手放す
ライフスタイル誌『暮らしのおへそ』で編集ディレクターを務め、自然体な暮らしを提案してきた一田憲子さん。60歳という人生の転換期を迎えるにあたり、直面する悩みと向き合う中で見つけたものとは。人間ドックで通常より大きい大腸ポリープが見つかった一田さん。大腸癌の疑いがあると言われ、「もし……」と暗い気持ちになった後、気づいたことがあるそうで―― * * * * * * * ◆大腸癌の疑いがある…… 2022年12月、生まれて初めて入院というものを経験しました。いやあ~快適だったなあ~。高台にある病棟は11階建て。4人部屋の予定だったのに、満室だからと2人部屋に入らせてもらえてラッキー! 10階の角部屋からは、東京タワーもスカイツリーも見渡せて、朝焼けから夕暮れ、月が浮かぶ夜景までを楽しむことができました。 7月に受けた人間ドックで大腸ポリープが見つかり、通常のものより大きく、さらに腸に張り付く扁平の形だったので入院して切除手術を受けました。2センチ以上になると、大腸癌の疑いがある……。そう聞いたときには、呆然としました。 幸い術後の経過は順調で、予定より2日も早く退院。今、こうしてパソコンに向かっているというわけです。ただし、病理検査の結果待ちです。まだ白か黒かはっきりしない。そんな時だから書けることを、ここに書いておこうと思います。
◆一歩引いた目で自分の人生を振り返る 切除手術が必要だ、とわかったのは11月のことでした。そこから「もし、癌だったらどうしよう」と四六時中そのことが頭を離れませんでした。でも、どこかで「ま、いいか」と思ったのも事実です。 「え? もういい?」とそんなことを考える自分にびっくりしてしまいました。なにがもういいのかな? なぜだか、あっけらかんとした自分の心に問いかけてみると……。「私、ここまで十分頑張ったもの」と思ったのでした。 フリーライターになって、ひとりで食べていけるように、仕事を頑張ってきたよなあ。『暮らしのおへそ』というムックを立ち上げたり、『外の音、内の香』というウェブサイトを作ったり。ライター塾も始めたし、あれこれ、いろんなことをやってきたんだよなあ。こんなにやれたら、もう十分だろう、と思ったのです。 それでも、夜ベッドに入ると「もし……」と、胸いっぱいに暗い気持ちが広がります。朝起きても、そのモヤは晴れずに、ずっとどんよりとした気分でした。 夫も人間ドックでひっかかり経過観察の身。ああ、人生後半になると、突然こんな風に、健康が脅かされるようになるんだなあと、驚いてしまいます。 思えば、これまで、いろいろ大変なことはあったけれど、私の人生はそこそこ順風満帆だったのかもしれない。ふとそんな考えが浮かんできました。え?そうだったの?とこれまたびっくり! というのも、私は若い頃からずっと「まだまだダメだ」「もっとよくなるはず」と物足りなさを燃料にして、エンジンをふかしてきたのですから。 でも、ここにきて冷静に一歩引いた目で自分の人生を振り返らざるを得なくなったとき、好きなことを仕事にし、それなりに努力が成果に結びついてきたことは、幸せだったんだ!と自分を認めてあげたくなったのでした。 なのに……です。突然、自分の力ではどうしようもない「癌かも」という事実が、やってきちゃった!
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