一田憲子 なぜ怖がりの私が手術を前に「ま、いいか」と開き直れたのか。人生の選択肢を広げるために「怖がり気質」を手放す
◆斜めの方角へジャンプする時期 今回の入院は、この「怖がり」をそろそろ手放してもいいんじゃない?というサインなのかもしれない、と考えるようになりました。 命に関わるいちばんの「恐怖」を目の前にして、「でも」と前を向く。そうせざるを得ない状況を、神様がプレゼントしてくれたのかも。だから、少しずつ、怖がらない練習をしようと思います。 病理検査待ちでもやもやするけれど、おいしいものを食べ、好きな本を読み、誰かとおしゃべりを楽しんで、「お、なかなかいいじゃん!」という時間を少しずつ増やしていく……。 そうやって、そろりそろりと楽しむ経験値を増やしていけたらいいなあ。歳を重ねるということは、若い頃の価値観とは真逆なものも自分の中に少しずつ取り入れ、「多様性」という畑を耕すことなのかもと考えます。 そうやって正解がひとつではない人生を再構築していきたい。怖がりながら、ビビりながら、もうひとつの腕を、お楽しみの方へ。どうやら、人生は若い時に考えていたように、パッキリと割り切れるものでもないし、真実に一直線に繋がっているわけでもないよう。 本当のことは、今までの方程式の先にはなくて、思いもしない、あさっての方角にあるのかもしれない……。 だから今、ウロウロ、オロオロしながら、まっすぐな道を進むことを手放して、思い切って、人生の予定表にはなかった、斜めの方角へジャンプする時期なのかもしれないなあと思っています。 人間は相反する価値観を同時に持ちながら生きていける。つまり、病気であっても幸せになれる。お金がなくても豊かに過ごせる。仕事をしなくても楽しく暮らせる。だから、「怖い」にのっとられないように ※本稿は、『歳をとるのはこわいこと? ――60歳、今までとは違うメモリのものさしを持つ』(文藝春秋)の一部を再編集したものです
一田憲子
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