「元号とは」歴博の小倉准教授が解説(全文)これまで元号に使用された漢字は72文字
明治改元、平成改元時について
小倉:1868年の明治改元時には、宮中で神器をまつっていた内侍所にて、天皇がくじを引いて神意を伺い、3案より明治を選びました。その後の大正改元、昭和改元のときは、内密に準備した候補案より総理大臣が選び、新天皇践祚後に天皇の諮問機関である枢密院の審議を得て総理大臣が天皇に上奏し、改元詔書が交付されました。 1989年、平成改元時は、新天皇即位後、事前に依頼していた元号案検討者に正式委嘱を行い、出された案を各界有識者から構成される元号に関する懇談会および衆参両院正副議長に見てもらった上で、臨時閣議を経て新天皇に奏上され、元号を改める政令が公布されました。 元号の文字は8世紀に4字の例がありますけれども、通例、漢字2字であり、今回も平成に倣って漢字2字を選ぶことが明らかにされています。9世紀から10世紀ごろにかけて候補案にその文字を含む漢籍からの抜き書きを添えて、年号勘文として提出する方法が生まれ、前近代を通じての通例となりました。1人が3~5程度の候補案を挙げることが一般的です。 改元定めでは、出された候補案の善しあしを、発音や漢字自体の意味、つくりなどの構成、中国なども含めてその字を含む元号の先例が良い時代であったかどうか、典拠となる文がふさわしいものであるかどうか、などが検討されました。元号に使用する文字の選定方針については、1979年に政府が閣議報告の形でまとめており、今回もそれを踏襲することが報道されています。これまでに元号に使用された漢字は72文字に限られています。 ただし、必ずしもそこからしか選ばれないというわけではなく、実際、昭和の昭、平成の成はどちらも初めて用いられた文字でした。なお、典籍についてはこれまでの元号は原則として漢籍でしたが、今回、安倍総理大臣は日本の書物を典拠とすることを望んでおり、実際に日本の古典に由来する案が候補に挙がっているとの報道がなされています。以上、簡単ながら元号について説明申し上げました。