新型フリードの魅力を走って体感。「ちょうどいい」が着実にアップデート
i-DCD→e:HEVで走りはどう進化した?
新型フリードのハイブリッド仕様は(先代と同様、ガソリン仕様も設定)、フィットやヴェゼルと同じe:HEV(イー・エイチイーブイ)を搭載する。走行用と発電用のふたつのモーターを持つシステムで、高速巡航時を除き、発電用モーターで発電した電力で走行用モーターを駆動して走る。 発進時を含めて基本的にはモーターの走りなので、スムース。システムが自動的に行なう走行モードの切り換えによる変動はまったく感じない。e:HEVがもたらすスムースな走りは、新型フリードの大きな特徴だ。 ガソリン 1.5Lポート噴射 最高出力:118ps(87kW)/6600rpm 最大トルク:142Nm/4300rpm いっぽうで、先代フリードの走る・曲がる・止まるといった、クルマとしての基本性能は、デビューから8年を経過しているにも関わらず、まったく色あせていないと感じた。なんの不満もなく、快適である。現在でも「ちょうどいい」クルマとして充分通用する印象。その証拠に、2024年4月の新車販売台数は4535台で、全体の21位。ホンダ車でいえば、ステップワゴン(5023台/18位)、フィット(4944台/19位)に次ぐ販売台数だ(1位はN-BOXで14947台)。フリードはモデル末期にもかかわらず、多くの支持を集めていることになる。 となると新型、「これがあるから新型が欲しい」という魅力的な特徴がなければ、現行を上回る需要を生むことはできない。その点、開発陣も重々承知しており、ひとつには前述したe:HEVが挙げられる。2列目シート用に設けたリヤクーラーを魅力に感じる人もいるだろう。
視界の良さは新型の大きな美点
テストコースでの試乗では、Aピラーの形状違いによる視界の違いが顕著だった。先代フリードのAピラーはΛ状に二股に分かれており、間にガラスがはめ込まれている。新型のピラーは1本だ。タイトな右コーナーを曲がる際、先代は二股ピラーが視界を邪魔するため、首を動かしてピラーで隠れている部分を確認したくなる。 新型の視界はずっとクリアでストレスがない。サイドミラーの取り付けを工夫したことにより、斜め下方の視界が抜けているのも良好な視界の実現に効いている。 「すっきり」とか「クリア」といったワードは、新型フリードのエクステリアやインテリア全般についてもいえる。先代はステアリングホイールの上から車速などの情報を確認するアウトホイールメーターだったが、新型はステアリングホイールの内側に情報を表示するインホイールメーターとした。表示の位置を変えただけでなく、情報を集約し、より運転に集中できるよう(邪魔しないよう)にした。 センターコンソールの張り出しを抑え、2列目以降へのウォークスルーを可能にしている点は新旧同じ。シフトレバーの右側には、電動パーキングブレーキ(EPB)やオートマチックブレーキホールドの操作スイッチが並んでいる。先代フリードは足踏み式パーキングブレーキだったが、新型はEPBで、この違いも大きい。 新型フリードのインテリアは華やかで、明るい。コンパクトながらも、くつろげるリビングルームのような仕立てである。8年の差があるので当然だが、できたてのホテルの居室とそうでないホテルの居室に通じる新鮮味の違いが、新旧フリードには確実にある。新型は乗り込んだ瞬間に、気分が上がる。 大きすぎず、小さすぎず、「ちょうどいい」寸法は受け継いでいる。全長は4310mmで先代比+45mm。e:HEVを搭載するためにフロント側が少し伸びた格好だが、3列シートを備えるクルマとしては依然としてコンパクトなサイズに留まっている。 全幅はAIR(エア)が1695mmで先代と同じ。アウトドアテイストを強調したCROSSTAR(クロスター)はホイールアーチガーニッシュの装着分だけ幅が広く、全幅は1720mmである。ホイールベースは2740mmで先代と同じ。全高はルーフアンテナを含めて1755mmで、前代より105mm低い。先代フリードはロッドアンテナを採用していたが新型はシャークフィンアンテナで、アンナの種類の違いにより、アンテナを含んだ高さが大幅に低くなっている。 歴代フリードが培ってきた強みはしっかり継承し、進化分をきっちり上乗せしたのが新型フリードという印象。「ちょうどいい」と感じる魅力は着実にアップデートされている。
世良耕太