ヒャダイン、タイパ重視に感じる「疲れ」 音楽活動でも影響を実感
何も目的がないことをしたくて、わざわざマニラに行きます
――「タイパ」重視の傾向に対して、ヒャダインさんご自身はどう思っていますか。 ヒャダイン: 最近、“愛おしい無駄”というのはいっぱいあるなと本当に思うんです。無駄な事案、無駄な文章とか、無駄なものって愛おしいところがいっぱいあるんですよね。わざわざ何時間もかけて見られるかどうかもわからないオーロラのために旅行するとか、何時間もかけて友達に会いに行ってすぐ帰るとか。そういう無駄なものって結構気づきがあって楽しいと思いますし、そこから摂取できる栄養があるんじゃないかなと思うんです。それが老害と言われたら返す言葉がないんですけど。 多分、タイパ重視の方がこの話を聞いたら、「無駄じゃん」「楽しくないじゃん」となると思うんですが、僕は全然無駄とは思わないです。結果主義は本当にもったいないと思っちゃいますね。 ――ヒャダインさん自身が“愛おしい無駄”を実感した経験はあるのですか? ヒャダイン: コロナの影響で全然海外に行けてなかったし、飛行機のマイレージも溜まっていたので、マイレージを使ってどこかに行こうと思って探していたらマニラが候補に出てきたんです。でも、僕、マニラに全然興味がないんですよ。知識もありません。だけど行くことにしました。 何か目的がないということをすごくしたくなったんですよね。「この目的のためにどうすればいいんだ」というのを最短距離で目指せみたいなことばかり考えている時代に、ちょっと疲れちゃって。何の目的もないところにわざわざ時間をかけて行こうという無駄の塊ですよね。別にそこで楽しくても楽しくなくても、何も吸収しなくてもいいやと思ってます。でも「この経験は多分死ぬ前に思い出すかもね」と思って、マニラに行ってきます。大事な「わざわざ」です。 ――“わざわざ”手間のかかることをしようというのは、大事なことかもしれないですね。 ヒャダイン: 僕も結構せわしいタイプで、本来だったら一つの旅行で全部摂取してやろうと思うんです。でも、今は“摂取疲れ”があるので、今回は本当に流れるままにやってやろうと。 果たしてこの旅はどうなるんでしょうね。暇だったら現地でTwitterで「誰かご飯に行きませんか?」と呼びかけて、なんなら「ちょっと案内してもらってもいいですか?」みたいなことをしようかなと思っています。 ―――― ヒャダイン 1980年大阪府生まれ。音楽クリエイター。本名:前山田 健一。3歳の時にピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。ももいろクローバーZ、King&PrinceなどアイドルからJ-POP、アニメソング、ゲーム音楽など多方面への楽曲提供を精力的に行い、自身もタレントとして活動する。 文:姫野桂 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)