なぜWebサイト制作は失敗しやすいのか?巨大プロジェクトから学ぶ成功の鍵とは
Webサイト制作を成功させるための方法
ここまではWebサイト制作が思ったように進まない理由について述べてきました。では、どうしたらWebサイト制作を成功させられるのでしょうか。 ■ 適切な予算と時間を確保する Webサイト制作を成功させるには、適切な予算と時間の確保が不可欠です。依頼側と受注側(制作会社)の双方で予算と時間の現実的な見積もりを行い、それに基づいて計画を立てることが重要です。 Webサイト制作の現場では価格破壊が起きています。ただ作るだけならかなり少額でも可能ですが、思いどおりのものができるかは別です。Webサイトの原価はほとんどが人件費であり、稼働した人数と稼働時間で算出されます。きちんと思いどおりのWebサイトを作るには、それなりの時間と費用がかかるのです。 また、実際に時間やコストを見積もりする際は、基準(アンカー)が重要です。根拠となる基準が正しくなければ、適切な見積もりはできません。 『BIG THINGS』では、見積もりの方法として、「参照クラス予測法」を提唱しています。この方法は、費用や時間をタスクの積み上げとして計算するのではなく、類似となる事例でかかったコストや時間を基準にして計算します。 Webサイト制作に置き換えると、まず同じような規模のWebサイトの事例で、どれくらいコストや時間がかかったのかを把握します。その上で、それらの事例の平均値をとり、リスクなどを加味した現実に即した予算や時間を計算するのです。 ■ 経験豊富な人を巻き込んだ良いチームをつくる Webサイト制作には、多くの専門知識と経験を必要とします。そのため、プロジェクトを成功させるためには、経験豊富な人材を集めた良いチームを作ることが重要です。 では、どうしたら良いチームを作れるでしょうか。一番手っ取り早いのは、経験豊かなチームを抱えている制作会社に発注することです。自分たちの業界や商材に知見があったり、Webサイト制作の実績が多い会社に依頼したりすることで、リスクは大きく減らせるはずです。 また制作の段階では、丸投げにせず、チームとして仕事をすることも重要でしょう。私の経験上、依頼側が主体的にサイト制作に関わり、コミュニケーションをとらないと、トラブルが起こる可能性が非常に高まります。 事業について詳しいのは依頼側、Webサイト制作に詳しいのは制作側です。それぞれが自分たちの詳しい領域の知見を持ち寄り、チームで協力することで、成功確率は高まるはずです。 ■ 計画段階で、徹底的に「実験」する 計画段階での「実験」は、Webサイト制作の成功に欠かせません。具体的には、プロトタイプやワイヤーフレームを作成し、それを基にユーザーテストを行うことで、初期段階で問題点を洗い出すことができます。また、デザインや機能の仮説を検証し、必要な修正を行うことで、後々の手戻りを減らすことができます。 『BIG THINGS』でも述べられているように、成功するプロジェクトは計画段階で多くの時間を費やし、さまざまなシナリオをシミュレーションしています。これにより、リスクを事前に把握し、適切な対応策を講じることができます。 サイト制作でデザインやコーディングを始めてしまうと、なかなか逆戻りすることが難しくなります。仮にできたとしても、かなりの工数や時間を無駄にすることになります。 実験を通じて得られたデータやフィードバックを基に計画を練り直し、より現実的で実行可能な計画を立てることが成功への近道になるはずです。 ■ 「スモールシングス戦略」で、ブロックを組むようにWebサイトをつくる 『BIG THINGS』では、巨大プロジェクトを成功させるために、「スモールシングス戦略」を提唱しています。スモールシングス戦略とは、1つの大きいものをつくるのではなく、多くの小さいものをつくり、それを組み合わせることで、プロジェクトを完成させる考え方です。小さいものは複雑性が少なく、また繰り返し作ることで、飛躍的に生産性は向上するのです。 そして、この考え方は、Webサイトでも応用できるのではないかと思っています。 一般的に、Webサイトの制作時はディレクトリマップをつくり、ページすべてを作り上げてから公開するという手順をとります。 しかしながら、この手法では問題があったときに全体に影響してしまい、修正自体に工数がかかるほか、再度全体をチェックする必要が出てきます。 であれば、「1つのWebサイトをつくる」のではなく、「多数のWebページをつくって組み立てる」という考え方はどうでしょうか。さらには、Webページ内もパーツの集合体と考えることで同じパーツを使い回せるため、効率はさらに高まります。 実際、最近のCMSでは、「モジュール」や「ブロック」という名前のパーツを組み立てて、1つのWebページやWebサイトをつくるような手法が広がっています。 今後のWebサイト制作は、小さく作ることが主流となっていくのかもしれません。
おわりに
この記事では、Webサイト制作がうまくいかない理由とその解決策について考えてみました。 記事中で紹介した『BIG THINGS』には、他にもプロジェクトマネジメントに関する示唆深い話が多くあります。ご興味がある方は、ぜひ読んでみてください。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご意見やご感想などあれば、ぜひX(Twitter)などでお知らせください。