なぜWebサイト制作は失敗しやすいのか?巨大プロジェクトから学ぶ成功の鍵とは
Webサイト制作がうまくいかない理由
■ (1)当初の目的がすり替わってしまうから Webサイトには必ず制作する理由があり、成し遂げたい目的があるはずです。しかし、いざ制作を始めようとすると、さまざまな思惑が混ざってしまい、徐々に当初の目的からズレてしまうことはよくあります。 『BIG THINGS』では、とある夫婦のキッチンリフォームのエピソードが紹介されています。 ┌────────── ニューヨークに住むある夫婦は、自分たちの住んでいた家のキッチンをリフォームすることにしました。建築士を雇い、綿密に設計を練って工事をはじめました。しかし、いざリフォームを始めてみると、キッチンの床を支える基礎部分に問題があることが分かります。そしてどうせ基礎を直すならと、ついでに床材をすべて張り替えることに。さらには他に気になるところも一緒にリフォームをして行った結果、最終的には予算が4.7倍も超過し、さらに3ヶ月で終わる工事は、1.5年もかかったそうです。 └────────── Webサイト制作においても、似たようなことは起こりがちです。たとえば、最初は「Webサイトで集客できるようにしたい」と考えたとします。しかし、話を進めていくにつれて、「せっかく作るのだから、おしゃれなデザインにしよう」とか、「採用も強化したいから採用サイトも一緒につくろう」とか、追加で要望が出てきます。 このように途中で要件を増やしていくと、たいていの場合、スケジュール遅延を招いたり、工程が複雑になるため、思ったような仕上がりにならなかったりするのです。 ■ (2)常に「ベストケース」を想定してしまうから Webサイト制作をする際は、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)を作成することが多いはずです。しかしながら、多くの場合、WBSで決めたとおりには進みません。なぜなら、WBSはすべてが順調にいったケースを想定しているからです。 実際には、なかなかデザインの方向性が決まらなかったり、技術的な問題で開発が遅れたり、スタッフの体調不良で業務が停滞したりと、予期しないことが起こります。 また、人は作業にかかる時間を実際よりも少なく見積もってしまう傾向があるそうです。『BIG THINGS』では、このように述べられています。 ┌────────── ある実験は、学生に学業やプライベートのさまざまなタスクの所要時間を、信頼度(確度)別に示してもらった。(中略)驚いたことに「99%の確率で」、つまり「ほぼ確実に」終わると宣言した時間で実際にタスクを終わらせた人は、45%に過ぎなかった。 └────────── それゆえ当初想定していた工数だけでは足りなくなってしまい、結果としてスケジュールに無理が出るといったことが起こるのです。 ■ (3)計画を軽視して、実行を始めてしまうから Webサイトの制作において一番重要なのは、企画の部分です。 何の目的でサイトをつくるのか。サイトを通して何を伝えたいのか。見た人にどのような行動をしてほしいのか。目的が定まるからこそ、デザインや訴求するメッセージが決まってくるのです。 しかしながら、こういった企画の部分は面倒で労力もかかります。むしろ早くデザインにとりかかり、Webサイトの実制作を始めたい衝動に駆られます。その方が「前に進んでいる」感じがあるからです。また社内に報告するときも、形があるほうが説明しやすいでしょう。 しかし、企画や計画を軽視して実作業をはじめてしまうと、必ず歪みが出てきます。歪みを正そうと場当たり的な対応をしていけば、他のところに影響が及んでしまい、またその対応をするという負のループに陥ることは少なくありません。結果として、スケジュールの遅延につながってしまうのです。