『光る君へ』権勢を誇示するあまり悪評広まる藤原道長、病に倒れるも三条天皇を退位に追い込む“復活劇”が始まる
■ 道長の辞表をしばらく預かっていた三条天皇の「本意」 道長自身も風当たりの強さを感じたからか、あるいはそれほど病状が重かったのか。病に伏せてしばらくすると、三条天皇に辞表を提出。内覧と左大臣から辞する旨を伝えている。 かつて、道長は一条天皇にも辞表を出したことが何度もあった。その時はすぐさま返却されているが、三条天皇は6月4日に奏上された道長の辞表をしばらく預かってから、7月8日に返却している。 ドラマでは、三条天皇が道長の辞表を見て「返したくないがのう」とつぶやく場面があった。先例に従い辞表を返却したものの本意ではなかったという描写は、2人の関係性をよく表していたように思う。 ドラマの終盤では、病が重くなり死期さえも近そうな道長のもとに、まひろ(紫式部)が訪ねてきた。一緒に川辺を歩きながら、お互いに「あなたに先に死んでほしくない」という思いをぶつけ合い、道長は涙する。 次回放送は「輝きののちに」。ここからは心身ともに疲弊した道長が復活し、三条天皇に退位を迫る。どのような展開が繰り広げられるのか注目したい。 【参考文献】 『新潮日本古典集成〈新装版〉紫式部日記 紫式部集』(山本利達校注、新潮社) 『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)『藤原行成「権記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫) 『現代語訳 小右記』(倉本一宏編、吉川弘文館) 『紫式部』(今井源衛著、吉川弘文館) 『藤原道長』(山中裕著、吉川弘文館) 『紫式部と藤原道長』(倉本一宏著、講談社現代新書) 『三条天皇―心にもあらでうき世に長らへば』(倉本一宏著、ミネルヴァ日本評伝選) 『偉人名言迷言事典』(真山知幸著、笠間書院)
真山 知幸