金融機関のAIリスク管理の課題と対策、AIスタートアップ資金調達額から見る
80%の労力削減を実現し、イノベーションに配分する
ValidMindはこれらの原則を元に、AI、機械学習(ML)、大規模言語モデル(LLM)技術を使用して、文書化プロセスを大幅に自動化、簡素化を実現させた。そしてプラットフォームを包括的かつ柔軟に作ることで、使用者がAI関連の規制の変更や、新法の導入に迅速に対応できるようにする。 ValidMindの共同創設者でCEOのJonas Jacobi氏は、「モデル開発者は文章作成にその労力の50%を費やしている。つまり、週40時間のうち、20時間が文書作成に使われている。これを自動化すると最大80%削減でき、20時間かかっていた作業がたった4時間になる。つまり、残りの16時間を新しいモデルの作成、既存のモデルの改善、および銀行内でのイノベーションに再配分することができる」とその強みを説明する。 ValidMindは、もともとはSR 11-7要件への準拠を支援するために設計されたプラットフォームである。 SR 11-7とはモデルリスク管理に関する監督上のガイダンスで、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)と通貨監督庁(OCC)によって2011年に発行された。AIに関しては、米国政府が2022年、「AI権利章典の青写真」を公表、2023年バイデン大統領が、AIの安全性に関する大統領令に署名した。 これらの動きに対応することで、ValidMindはモデルリスク管理の「認証機関」のような存在になることを目指している。 Jacobi氏は言う。「ValidMindは、銀行業界のモデルリスク管理に特化して設計された唯一のプラットフォームであり、適切なタイミングで、適切な顧客に適切な製品を構築した」。ValidMindのプラットフォームがモデルリスク管理のパラダイムを変えつつある重要な一翼を担っていることは間違いない。 アメリカの経営コンサルティング企業Accentureによると、2025年までに金融サービス部門の労働力の7~10%が自動化され、43~48%がテクノロジーで補強される可能性があるという。そして、コスト削減と生産性向上により、北米の金融機関だけでも累計で最大1,400億ドル(約21兆2,200億円)の価値が生まれると分析している。
文:水迫尚子 /編集:岡徳之(Livit)